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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/02/03 (Tue) 00:04
「東京の少年」最終回。

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 清四郎と二人で話がしたい、と言うので、清四郎は仲間と別れて弓彦を自分の部屋へと招いていた。
「で?話とは?」
 ミニテーブルの前で俯く弓彦にお茶の入った湯飲みを差し出しながら清四郎は尋ねた。
「人とは違うことをしようと思ったら、それなりのリスクを負う覚悟をしろ、とそういう意味だったんですか?」
 そう言ってから顔を上げて清四郎の目を見た弓彦の目は力強く光り輝いていた。
 清四郎は何も言わずとも今回彼に知ってほしかったことを的確に言い当てられたので、おや、というように少年を見つめた。
「やっぱり君は賢いね。」
 そういって感心したように微笑む。
「確かに、僕にはその覚悟が足りませんでした。アンダーグラウンドを覗き見るにはまだ僕は未熟だ。」
と再び俯いた弓彦の頭部を見ながら、清四郎は綻び笑いが出そうになるのを堪えた。
 なんて大人ぶってるんでしょうね。そんなところがますます外見の幼さを際立たせてるというのに。
 自分にも覚えがある過去である。あの頃の自分もこんなふうに見えていたのかと思うとかなりおかしかった。
「剣菱さんも、すごい人ですね。」
と、急に弓彦が言うまでは。
 なぜここで悠理の名前が出るんだ?と清四郎は笑みが引っ込む。
「僕は正直、学校の女子たちが剣菱さんに憧れている理由がわからなかった。ただの暴れん坊の問題児で、女子たちはあの人の無性的なところに思春期の少女らしい感傷で憧れているだけなんだと思っていた。」
 そういう少年の顔が火照っていることに清四郎は気づいた。耳まで赤くしている。
「でも今日、彼女の姿を見て、綺麗だと思ったんです。」
 その声は蚊の鳴くような声だった。
 悠理が暴れる姿を見て綺麗だと思った。あの目に射すくめられた。
「そうですね。彼女はとても綺麗だ。」
 思わず清四郎はそう言ってしまった。
 すると上目遣いにこちらを見る弓彦と目が合った。ああ、覚えのある、熱に浮かされた少年の目だ。
 こんなところまで僕に似てるなんて、ね。他人とは思えませんよ。
「お二人は恋人同士なのでしょう?」
 清四郎は固まった。この少年、やはり侮れない。
「松竹梅さんと走っていく後姿を見る菊正宗さんの目が、そう言ってた。」
 一瞬の嫉妬。魅録が相手だというのに、あの瞬間の魅録の頭には可憐のことしかなかったのに、感じた感情。
 まさか気づかれるとは思わなかった。
 悠理にも、魅録にも気づかせるわけにはいかない感情だった。
「君は僕より大物になると思いますよ。」
 清四郎はため息を吐きながら降参したように言った。
 まことに末恐ろしい少年だ。と思う。
「でも剣菱さんみたいな人は二人といない。」
「そうですね。君には渡しません。」
「どうせ今の僕に振り向いてもらえるとは思ってませんから。」
 いつかあなた以上の男になって彼女を奪ってみせる、という意味にとれなくもない少年の発言に、清四郎はにっこりと微笑んだ。
「いつでも受けてたちますよ。でもその時どちらを選ぶかは悠理の自由意志です。」
 その清四郎の軽い殺気を帯びた悪魔の笑みに、少年も挑むような微笑を返した。
「わかってます。」



「いやー、魅録ちゃんもわかりやすい男だねー。」
 清四郎が松竹梅家を訪ねると、悠理の声が聞こえてきた。まだここにいたのか、と清四郎は足を止めた。
「どういう意味だよ。」
 魅録の声が憮然としている。バイクを磨きながら背後にいる悠理と会話しているものらしかった。
 今日は事件解決したので、勉強は一時休止ということにしていた。明日からまた受験勉強だ。
「可憐は気づいてなかったみたいだけど、完璧キレてたよな、今日のお前。」
 にやにや笑いをする悠理の顔が目に浮かぶ。
「・・・清四郎もキレてたと思うぞ。」
と魅録が言うので、清四郎は赤面した。二人に姿が見えてなくてよかった。
「ん。たかがチンピラ相手にナイフを投げるとは思わなかった。」
「その清四郎の気持ちに気づいてるなら、他の男のバイクのケツに乗りながら背中に頬擦りすんなよ。」
 なに?!と清四郎の顔がこわばる。魅録の背中に頬擦り?いや、待て、バイクに乗ってたんだからフルフェイスのヘルメット越しで、いくら頬擦りといっても魅録の背中に感じた感触は・・・
 ぐるぐる清四郎が考えていると、ぼそぼそと呟く悠理の声が聞こえてきた。
「だって・・・」
「だって、なんだよ?」
「清四郎の背中もこんくらいの大きさかなって思って・・・」
 恥らう悠理の姿が見えたような気がした。ついでに呆れる魅録の姿も。
「あほかー!いくらお前に俺が惚れてないってもめちゃくちゃ失礼だぞ、それ。」
 確かに・・・と清四郎は綻びそうになる頬を必死で抑えた。
「それなら次からは清四郎を後ろに乗せて走れよ。免許とったんだろう?」
「やだよ。」
「どうして嫌なんですか?」
 急に思ってもみなかった声がして、悠理は飛び上がるほどびっくりした。
「え?!なんで清四郎がいるの?」
「それはこっちのセリフですよ。もう帰ったのかと思ってましたよ。」
 曲がり角から現れた清四郎の姿に、悠理はこの上ないほど赤面する。さっきのを聞かれてたのか。
「まあ、さしづめ魅録をからかうため、と思っていいんでしょう?」
と口を尖らせる清四郎に、魅録は嫉妬の欠片を見つけて吹き出しそうになった。
「で?お前はなんでここに?」
 くくくっと笑いを堪えている魅録の様子に気づいて清四郎は少し目元を赤く染めた。
「別に。喜多屋君と話したことを魅録と語ろうと思っただけです。」
「あいつ何だって?」
 悠理が話をさっきの話からそらしたくて言う。だが、清四郎はその中身を言えるはずもなかった。
「まあ、男同士の話です。」
 曖昧にごまかして悠理に微笑みかけた。
 そんなんずるいー、と頬を膨らませる悠理に、魅録が話を戻した。
「で?なんでお前は清四郎をバイクのケツに乗せたくないんだ?」
 う、と悠理が詰まる。清四郎は横目で悠理の顔をうかがう。
「だって・・・清四郎が後ろから腕回すんだろ?ドキドキして気が散って事故っちゃうよ。」
 清四郎の目が見開かれる。
 魅録が耐え切れずにぶっと吹きだす。
「だとよ。色男。」

 魅録にこれ以上笑われるのも気まずいので、二人は松竹梅邸を辞した。不自然に一歩分離れて歩く。
「ねえ、悠理。」
と清四郎が一歩後ろを歩く悠理に話しかける。
「なんだ?」
 悠理が応える。
「僕はどうやらお前が他の男とタンデムするのに嫉妬するくらいにはお前を好きらしい。」
 俯いていた悠理がぱっと顔を上げる。
 清四郎は相変わらず前を向いて歩いていたけれど、その首筋が赤くなってるような気がした。
「本当?」
「こんなことで嘘はつきませんよ。」
 清四郎は思い切って立ち止まると、悠理のほうを振り返った。
 悠理の顔が輝いていた。
「すっげえ嬉しいかも・・・。」
 自分も野梨子に嫉妬していた。自分の知らない清四郎を知る野梨子に嫉妬していた。
 だけど、それは清四郎も同じだった。清四郎も魅録に嫉妬していた。
 自分だけが彼を好きなんじゃないかという不安は常に悠理の中にあったから、素直にそれは嬉しかった。
「男に嫉妬させて嬉しいなんてお前もなかなか悪女ですね。」
 つい清四郎は照れくさくて憎まれ口を叩いてみた。
 だが、悠理はそれも全く堪えてないみたいで、にこにこと笑っていた。
 その顔があんまり可愛いので、清四郎はくらり、と眩暈にも似た感情を覚えた。
「悠理、お前とならバイクで心中してもいいかもしれない。」
 今度は悠理が目を見開いた。顔から湯気が出そうなほど赤くなっている。
 冗談のような口調なのに、清四郎のその顔は存外真剣で・・・
「心中なんかやだよ。まだキスもしてないのに!」
と拳を握り締めて力説する悠理の肩に、手を置いた。
「じゃあ、一つ心残りをなくしてあげますよ。」

 ゆっくりと顔が近づく。
 悠理がぎゅっと瞼を閉じる。

 ちゅ、と軽く唇が触れ合った。

「絶対お前をバイクに乗せてなんかやらないからな。」
 真っ赤な顔で口を尖らせる女。
「もう心残りはなくなったでしょ?」
 うっすら赤く頬を染めながらもにこやかな男。
「やだ!もっともっといっぱいするのー!」
 彼女は思わず拳を握り締める。
「じゃあ、バイクは一人で乗るんですね。」
 彼はますますにっこりと笑う。
「ん。他の男とも2ケツしない。」
 彼女は呟いて俯く。
「はい、よくできました。」
 彼はきゅっと繋いだ手に力を込めた。

 ちなみに別れ際にもご褒美と称して清四郎から軽いキスが進呈され、悠理は誰にも見られてないか慌てて周りを見渡すことになる。
(2004.9.11)
(2004.11.3公開)
 
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