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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2017/08/22 (Tue) 12:48
10周年記念で書いた小話。ブログより転載。



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ついに美童に言われてしまいましたよ。
「なんかこの頃、清四郎のツンデレがひどくなってない?」
って。
いわく、悠理をつきはなしては困ったころに助け船を出してやって甘やかすパターンが、目に見えて増えてきていると。
「デレの顔が本当にゆるみきってるよ。他の皆にはまだ気付かれてないみたいだけど」
と、僕の耳元に囁く美童は、呆れたような可笑しそうな顔をしている。
 
自覚はあるんです。
というかほとんどわざとです。
いつかは気づかれるだろうと思いつつ、止められないんです。

きっかけは、あの婚約騒動の後だった。
「もう、じっちゃんめ~~~~」
と言いながら何日振りかで生徒会室にやってきた悠理が座った席は、僕の隣。単に他の皆がすでにそろっていたのでそこしか空いていなかったから。
あの騒動の時に「悠理がかわいそうよ!」と憤慨して僕に怒っていた可憐なんかは「あ、しまった」という顔を見せた。しかし当の悠理は平然としているし、他のメンバーもまったく気にしていない様子だったので、それ以上のリアクションはなかった。
「やっぱり想像どおりですか。和尚は人につけこむときはとことんつけこみますからね」
和尚は婚約者である僕を倒したのだから自分にも悠理との結婚の権利がある、とかなんとか脅して悠理をただでこきつかっていたという。とはいえもちろん本気の脅しではなく、数日で解放したようだが。まあ和尚らしいといえば和尚らしい。
「なんであんな変態和尚の弟子なんかやってんだ!」
悠理が横目で僕を睨む。
「その和尚に助けられたんだろうが。その隣の男から」
魅録が茶々を入れる。
「はいはい。いろいろとすみませんでしたよ。悠理にはまだ言ってませんでしたね」
僕が素直に悠理に頭を下げると、
「まだ言ってませんでしたの?」
と、野梨子が眉をひそめた。
「なんやかやでタイミングを逃してましてね」
僕は肩をすくめた。
「なんか誠意ってもんが感じられないんだけど」
と、悠理はぶつぶつ言いながら目の前の菓子に手を伸ばした。ずいぶんと大きなきんつばは、悠理ファンから「学校にお戻りになって嬉しうございますわ」の言葉とともに渡されたものだった。

大きく口を開けた悠理に「やっぱりマナーもなにもあったもんじゃないな」という想いと、「これでこそ悠理だな」という想いとが微妙に交錯する。
と、その時だった。
悠理が目を白黒させながら自分の胸を叩き始めたのだ。
喉に詰まらせたらしい。
僕はとっさに悠理の分のお茶(すでにぬるくなっている)を悠理の手に握らせた。
悠理はそれを口に流し込み一息つくと、続けて僕が差し出した僕の湯呑にも手を出した。
「あ~、死ぬかと思った」
と、大きくあえぐ。
そして息が整うと、僕のほうを向いてにこりと笑った。

「ありがとう、清四郎」

瞬間、どきり。

何気ない一言だ。いつもの会話だ。
あんな友情を失っても仕方ないような出来事があったにしては、普通すぎる会話だった。
だが、僕の胸はうずうずとくすぐったくなった。

「いえいえ、気を付けてくださいよ。せっかくいつもの学園生活に戻れた所なんですからね」
僕は平然を装って言った。
そうだ。いつもの生活。いつもの会話。
なぜこんな何気ない悠理の一言と笑顔が、僕の胸に響いたのか、その時の僕にはわからなかった。
ただ、自分で思った以上に悠理を傷つけたことが気になっているのだと、そのせいだと思っていた。



それからも僕たちはいろいろな事件にでくわしたし、それ以上に平凡な退屈な日々も過ぎて行った。
そしてそのほとんどすべての時間を倶楽部の皆で共有していた。

ある心霊事件の時、とり憑かれた悠理はよほど怖かったのだろう、無事にその霊が成仏した時にぼろぼろと大粒の涙をこぼした。
そして「うわああああん」と大声をあげた。
一番近くに立っていたのは僕だ。事件を解決するのに悪玉を暴いたのも僕だった。
悠理はがしっと僕の胸に抱きつくと、
「ありがとおおおおお!怖かったよおおおおおお!」
とわんわん泣いた。

ただ愛しかった。
そっとその頭を撫でてやりながら、頭に浮かんだのはその一言だ。

僕は気づいた。
そうか。僕は悠理の「ありがとう」の言葉が欲しかったのだ。
あの日の胸のうずきがたまらなく甘くて、ただ悠理が愛しくて。
他の友人に言われてもなんとも思わないその一言が、悠理からだと特別なものに思えるのだ。

悠理と過ごしてきた日々の、日常の、友情の、すべてが愛しいのだ。



それから僕は悠理の「ありがとう」を聞くために、世間でいわゆるツンデレな行動をとってしまうようになった。
悠理はまだそのことに気付いていない。
もちろん、その奥にある僕の真意にも気付いていない。

だがいつか僕は告げよう。「ありがとう」と。
こんな僕と友だちでいてくれてありがとう、と。
こんな僕を信頼してくれてありがとう、と。

僕に「愛しい」という感情を教えてくれてありがとう、と。

そしていつか、「僕を愛してくれてありがとう」と言える日が来てくれることを、僕は夢見ている。
(2014.8.19)
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