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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/02/03 (Tue) 23:20
お正月。野梨子宅には先客が…。

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「あら、悠理、整髪料、変えました?」
 不意に野梨子に言われて、悠理はせんべいを入れようと大きく開けた口を閉じることが出来なくなった。
 1月初め。まだ世間は冬休みの最中。聖プレジデント以外の大学を受ける清四郎と魅録はセンター試験直前の模試を受けに行っていた。他のメンバーは野梨子宅で勉強会である。
 野梨子の目の前に身を乗り出してせんべいを取った悠理から、野梨子は普段と違う匂いを感じ取ったのだった。
 その野梨子のセリフに美童がちょっと匂いに気をつけてみる。これは・・・
「清四郎の整髪料じゃない?」
「あら、そういえば。」
 野梨子には嗅ぎなれた匂い。清四郎があのオールバックのヘアスタイルをトレードマークにしはじめた高校の入学式以来、ずっと馴染んできたものだ。
「なあにい、意味深ねえ。」
 可憐がにやにやと悠理のほうを見た。
「んあ?ナニ言ってんだよ、さっき和子さんとも話してたろ。昨夜も清四郎んとこに泊まりで勉強教えてもらってただけだって。」

 皆が勉強会のために集まったここ、白鹿邸には先客が来ていた。
 隣家の長女、菊正宗和子である。
「あれ?和子さん、こっちに来てたんですか?」
と目ざとくそれに気づいた美童が微笑みかけた。
 それから弟の賑やかな親友たちに口々に話しかけられ、黒髪をまっすぐ伸ばした和子は微笑み返した。
「ども。国試前の息抜きにお茶しに来たのよ。」
「そっか。3月って言ってたっけ?あたいたちの卒業式より後に試験だろ?頑張ってね。」
と、悠理が屈託なく笑んで親指を立てて見せた。
「へえ、医師国家試験ってそんなに遅いんだ。」
 可憐が驚く。
「発表は4月の終わりよ。」
「へええ~。それも知らなかった。」
 美童も驚いて可憐と目を見合わせる。
「なぜ悠理が知ってますの?」
 野梨子が首をかしげた。
「ああ、毎日のようにうちに来てるからね。食事時とかに話したのよ。」
 和子があっけらかんと言った。
「悠理ったら受験勉強頑張ってるものね。」
 可憐はよしよし、というように悠理の頭を撫でた。
 悠理もそれにえへへ、と笑って得意そうな表情をした。

 まだ悠理と清四郎が付き合っていると言うことは、魅録以外のメンバーにも、お互いの家族にも内緒にしていた。
 メンバーに内緒にしているのは、今はまだ6人のバランスを大事にしたいというのが一番だった。二人だけの時間も大事だが、6人で過ごす時間もかけがえがないものなのだ。
 家族に内緒にしているのは、気恥ずかしさもあるが、何より特に剣菱家では大騒ぎされそうだからである。せっかく今は悠理もやる気を出して勉強しているところなのに、親が狂喜乱舞して邪魔をしそうだから、というのが二人の共通見解だった。
 だから、悠理と清四郎がお互いの家を行き来して、更に泊り込みまでしているのも純粋に、悠理のやる気が出て受験勉強を頑張っているとだけ思わせておいたのだった。

 それに二人はまだやっとキスを交わすようになっただけの発展途上なのだ。
 ぶち壊しにされてはかなわない。

「でもさ~、ふつう残り香が残る?」
と美童が追求する。
 彼の目をごまかすのが一番の困難だというのがやはり悠理と清四郎の認識だったので、悠理は内心で焦った。
「や、だから、ちょっと居眠りしたときに清四郎の部屋のクッションを枕にしたから、それでついたんだろ。」
 確かにそれは事実だった。なのでその悠理のセリフには説得力があったらしい。
「まあねえ、そこらへんが関の山でしょう。」
と可憐が苦笑した。
 清四郎みたいな情緒障害者とお子ちゃま悠理に何かなんてありえないわよね~、とからから笑う。
 野梨子もそれに合わせて微笑む。
 悠理は美童も何も言わずに微笑んだので、ちょっと胸をなでおろしてほっとした。

 だがそれを見逃す美童ではなかった。
 へえ、悠理と清四郎がねえ。この様子じゃせいぜいがとこ、キスどまりかな。何しろ悠理だからね。清四郎はともかく。
 彼の勘は過たず、二人の関係を見抜いたのだった。

 考えてみれば清四郎と悠理というのは一番ありえなさそうで、一番ありえる関係なのではないだろうか?
 清四郎はゲイじゃない。女性に興味がないわけでもない。でもどちらかというと趣味を大事にして、女性に情熱をかけることは絶対にしない。
 色気のある女性に言い寄られても彼は適当にやり過ごすだけだろう。
 逆に悠理くらい奔放で天真爛漫なタイプのほうが彼の心を動かすパワーを持っているのじゃないだろうか。
 それにいつもなんだかんだと清四郎は悠理の世話を焼いている。実は結構子供っぽいところがある清四郎は悠理くらい手間のかかる相手のほうが保護欲をそそられるに違いない。
 悠理にしても、だ。清四郎は彼女にないものを与えてくれる存在だ。
 仲が良い、いつも「愛してる~」と言われてる(そういえば最近聞いてないな、と美童は思う)魅録ではダメだ。悠理も魅録も完全に相手を異性とは思ってない。(悠理は魅録の前じゃ男だ。)
 文句なく清四郎は悠理より強い男と言う条件を満たしている。そしていろいろなものから悠理を守ることが出来る。
 彼女が彼に反発しながらも惹かれて当たり前と言えば当たり前なのだ。

 それにこないだのドラッグ事件の時だって思えば二人の様子がおかしかったじゃないか。
 可憐がからかった時に清四郎は固まってたし、たかがチンピラ相手にナイフまで投げていた。悠理が危なかったからというよりは、彼女が転ばされたからだ。
 悠理だって野梨子が仲が良くなかった頃の話をしたときに・・・

 美童は野梨子のほうをそっと見た。
 二人が関係を内緒にしてるのは野梨子のせいだろうか?と思ったのだ。
 もちろん彼女は清四郎には惚れていない。ただの仲が良すぎる兄妹みたいなものだ。
 清四郎と野梨子は似すぎている。二人とも同族嫌悪を感じる種類の人間だから、この二人が恋愛感情で惹かれることはないだろう。
 そして野梨子は悠理よりも先に初恋は経験済みだ。だからもう兄離れはできてると思う。
 今の彼女は清四郎と悠理の関係を知ったらどうするのだろう?どう思うのだろう?

「美童?どうしましたの?わからないところでも?」
 野梨子が急に言うので、彼は自分が彼女をじっと見詰めすぎていたことに気づいた。
「いいや、なんでもない。ちょっと疲れて頭が飛んでた、かな。」
 にっこり笑う美童に、
「じゃあ、そろそろお茶にしましょうかね。」
と席を立つ野梨子だった。
「あ、あたいもトイレ。」
と、悠理も続けて席を立った。

続く
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