2015/03/02 (Mon) 23:41
ここはとある学園の生徒会室。またの名を有閑倶楽部と申します。
彼ら6人はごく普通(?)の高校生という姿を隠れ蓑に、地球の平和を乱す輩を相手に戦うチームだったのでした。
「だからさ、そろそろ僕たち、チーム名を決めたほうがいいと思うんだ。」
と姿は金髪で天使のように美しいが、中身は腹黒、女性殺しの美童@ブラックが言いました。
「そうですわね。毎回毎回『普段は高校生の姿をしているらしい謎のヒーロー戦隊の皆さん(仮名)』と悪役さんたちに呼ばせるのも悪いですわ。」
ずずっと緑茶をすすりながらこれまたお人形のように愛らしい美少女、野梨子@紫が同意しました。
「それ以前にその仮名だと俺たちの正体が敵のみならず、一般の皆さんにまでばれちまうだろうが。」
冷静にサブリーダー、煙草も酒もやりたい放題、敵よりも裏世界にまで詳しい魅録@ブルー(でも頭はピンク)が言う。
「そうねえ、そんな仮名じゃ情緒もへったくれもないわねえ。」
と今日もお肌に美容ローラーを転がすことに余念がない可憐@ピンクも同意しました。
「それよりも僕はどうして野梨子@紫だけ色の名前が日本名なのかが気になるんですが・・・」
妙に真剣な声でリーダーである清四郎@レッドが言いました。
「野梨子@紫がレインボーやラメってイメージか?」
おやつの煎餅をかじりながら食欲魔人、悠理@イエローが応えました。
「・・・ラメって色の名前?」
可憐@ピンクがツッコみます。
「私、紫で結構ですわ。」
静かに野梨子@紫が言います。
「それ以前にレインボーも単色じゃないだろう。」
魅録@ブルーが悠理@イエローにミニハリセンですかぽーんとツッコミをいれました。
「で。話を戻そうか。」
こほん、と美童@ブラックが咳払いをする。
「チーム名ですか・・・」
自分が話をそらした張本人であることを棚に上げて、清四郎@レッドが話を引き取りました。
「よし。では皆のアイデアを出してもらおうか。書記の可憐@ピンク、書き留めて。」
「わかったわ、清四郎@レッド」
と、可憐@ピンクがチョークを手に移動式黒板の前に立ちます。
「はーい!『悠理と五人の手下たち』!」
と悠理@イエローが勇んで手を上げました。
「却下。」
全員が完全にユニゾンして言いました。間髪も入っていなかったあたりさすがのチームワークですね。
ちなみに可憐@ピンクは手を動かしもしませんでした。
「別に有閑倶楽部のままでもよろしいかと思いますけど?」
この名前に愛着のある野梨子@紫が提案します。
「いやいや、それだと僕たちが正義の味方だと明かして回ってるようなものじゃないですか。隠密行動にもいろいろ支障が出てきますよ。」
「そうだね。そしたら僕も可憐@ピンクも行動しにくくなるよ。」
色仕掛けの隠密行動。それが彼らの役割です。正体がばれてはやはり動きにくいのです。
「一番困るのは清四郎@レッドだろ?敵を薬の実験台にする趣味が・・・」
頬杖をついて図星を指そうとした魅録@ブルーの頭が突然がくんと沈みました。
「なんだ?急に寝るなよ、魅録@ブルー。」
と悠理@イエローが呆れたようにピンクの頭をつんつんとつつきます。
しかし他のメンバーは知っています。清四郎@レッドがテーブルの下で彼の足に即効性の麻酔針を刺したことを。
「では魅録@ブルーは議決権を放棄したということで話を続けようか。」
清四郎@レッドがにこやかにテーブルに肘を突き、組んだ指に顎を乗せて優雅に話を促しました。
「そんじゃあねえ、『悠理と5人の盗賊』!」
「『アリババと40人の盗賊』かい!しかも正義の味方が盗賊を名乗ってどうする!」
清四郎@レッドが悠理@イエローの額に裏拳を叩き込みます。
しかしさすが悠理@イエローはそれをすんででよけてかすらせるだけにとどめました。野生動物並みです。
清四郎@レッドはちっと舌打ちして悠理@イエローを横目で睨みました。
「ねえねえ、『愛の戦士・有閑エンジェル』ってのはどう?」
にこにこと子供のような微笑を浮かべて美童@ブラックが言います。
「何よそれ?あんたもうちょっと日本語の勉強しなおしたほうがいいわよ。」
心底嫌そうな顔で可憐@ピンクが却下します。
「・・・『荒野の6人』。」
ぼそっとした声がしました。
「この日本のどこに荒野がありますの?それにそれを言うなら元ネタの『6人の閑人』がよろしいですわよ。清四郎@レッド。」
そうです。かの有名な西部劇は、日本のK沢監督の作品をモチーフに・・・ってそれは『侍』でしょう?それに7人ですよ、どっちも。
「どっちもやあよ。何考えてるのよ、皆。」
「じゃあ、可憐@ピンクにはいいアイデアが?」
言われて彼女はふふん、と鼻を高くします。
「ええ。とっておきの名前がね。」
「もったいぶらずに教えてくださいな。」
可憐@ピンクは自分の名と同じピンクのチョークを握ると黒板に書きながら読み上げました。
「『有閑戦隊・シックスハーツ』!」
文字の周りにはハートマークなどが可愛らしく飛び回っています。
「それって『有閑エンジェル』と大差ないんじゃ・・・」
美童@ブラックがもごもごと言いました。
それからも喧々諤々の議論は続きましたが、中々意見はまとまりませんでした。
「ふう、このまま話していても埒が明きませんな。」
清四郎@レッドがじと目で一同を見回しながら言いました。
いい加減、みんなも疲れていました。
「よし!皆の考える名前をくっつけるってのはどーだ?」
一人元気な悠理@イエローが挙手して発言します。そうです、彼女は礼儀正しいよい子なのです。
ただお行儀が悪くて頭が悪くて趣味が悪くて手癖が悪いだけなのです。
「くっつける?」
野梨子@紫がきょとんとします。
「野梨子@紫は『6人の閑人』。
可憐@ピンクは『有閑戦隊・シックスハーツ』。
美童@ブラックは『愛の戦士・有閑エンジェル』。
清四郎@レッドは『荒野の6人』。
そしてあたいは『○学忍者隊・レインボーマン』。」
「ちょっと待て。お前のアイデアは初耳だぞ?」
と美童@ブラックが眉をしかめます。
「虹は普通7色でしょうが。そしてどこの世界に黒が混ざった虹がある!」
清四郎@レッドも聞きとがめました。
しかし悠理@イエローは無視します。
「だからあ、これをあっちゃこっちゃつぎはぎするんだよ。」
「どんな風に?」
と可憐@ピンクが訊ねます。
「んー、たとえば『6人の有閑戦士・荒野のレインボー』。」
「長すぎますわ!」
と野梨子@紫がミニハリセンを悠理@イエローの後頭部に命中させました。これはもちろん夢の中にいる魅録@ブルーがテーブルの上に放り出していたものです。
その時、生徒会室のドアが開きました。
ひょっこり顔をのぞかせたのは学園の理事長であり、彼ら6人に出動指令を与えるミセス・エール@ホワイト(キ○ンディ・キャ○ディのファン)でした。
「話は聞かせてもらいましたよ。」
にっこりミセス・エール@ホワイトは微笑みました。
「結局オレが眠ってる間に決まっちまったのかよ。」
魅録@ブルーがぶうたれてます。
「まあまあ。あたいのも清四郎@レッドのも混ぜてもらえなかったんだし。」
悠理@イエローが中華まんをかじりながら魅録@ブルーの背中を叩いてなぐさめています。
「何気なくはずされましたよね。」
清四郎@レッドがじろっと残る3人を睨みました。
「あら。でもミセス・エール@ホワイトの決定に異存はないのでしょ?」
野梨子@紫がにっこり微笑みました。
「そうそう。あたしのアイデアから二つも単語が採用されるってことはミセス・エール@ホワイトとあたしって感性が似てるのね。」
可憐@ピンクが誇らしげに言います。
「それになんとなくしっくりきすぎて他の名前が考えらんなくなっちゃったしね。」
美童@ブラックが苦笑しました。
部屋には大きくその名前が書かれた垂れ幕がぶら下げられています。
命名:閑人戦隊・有閑シックス
妙に納まりのいい名前に、誰も異を唱えることができなかったのでしたとさ。
(2004.10.19)(2005.4.26加筆修正)
(2005.4.30サイト公開)
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