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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/02/18 (Wed) 23:52
「だから僕たちは」第1章第2回。

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「何事なんだろうねえ?」
と美童がひそひそと話す。もう自分たちだけしか残っていないのだから別に声を潜める必要はないのだが。
「俺にわかるかよ。」
と魅録も困惑顔だ。
「まあ、女性の思わせぶりは今に始まったことじゃありませんけどね。」
と言いながら、清四郎も釈然としない想いを抱えていた。
「悠理に何かあった、それは確かだと思うけどね。今日はどんな様子だったのさ、魅録。」
と美童は、悠理と同じクラスの魅録に訊ねる。
「どうもこうも多少顔色は悪かったが、2限目が終わったときに早弁までしてたぜ。いつもと変わりなし。」
「無理にいつもどおりに振舞おうとしていた、そんな様子ですか?」
 清四郎の声がいつもと同じ、理性的な色を漂わせていたので、魅録も美童も清四郎の瞳に浮かぶ揺らぎに気づかなかった。
「どうだかな。隠し事が下手なあいつだけどそこまでは・・・」
「そうですか。」
「ねえ、やっぱり気になるよ。ここは直球勝負で二人に直接尋ねてみない?」
 だが魅録は首を横に振る。
「あいつらが素直にしゃべるか?あいつらから話してくれるのを待つしかないんじゃないか?」
 彼は初めから諦めている。しょせん女に勝てるなんて思ってない。
 そのうち何もなかったかのように元通りに戻っているに違いない。何かささいなことなのだ。
 だが、いつもなら魅録のように女性陣には歯向かわないほうが賢明でしょうと言い出す清四郎が、今日は美童の言葉に乗ってきた。
「そうですね。あの悠理がそんな様子になるなんて尋常じゃない。美童、お願いできますか?」
「わかった。自信はないけど、やってみる。」



 有閑倶楽部の6人が互いの部屋を訪問するのは日常茶飯事のことである。
 だから今日も美童は、「可憐に忘れ物を頼まれたから。」と言っただけで野梨子の母に先導されて部屋の襖の前まで来ていた。
 いつものように彼が入ることを部屋の前で訊ねるだけでよかろうと、麗しの白鹿流家元は事前に娘に断ることなく彼をそこまで案内したのだった。
 襖越しに声をかけようとしたところで、部屋の中から少女たちの悲痛な声音が聞こえてきた。彼女は娘の親友とはいえ男性である美童をここまで連れてきたことを少しく後悔した。
「悠理だってあんなだけど女の子なのよ!ひどい!ひどすぎる!」
「可憐、声が大きいですわ。」
「何よ!野梨子だって悔しいでしょ!?あんなんじゃあいつ、この先まともに恋愛もできないかもしれない!」
「・・・私だってそのことには怒りを覚えておりますわ。」
 野梨子の声が震えている。襖の向こうで泣いているのではないか?
「二度とって言ったわ。・・・きっと無理やりだったのよ。」
「可憐・・・」
 家元はこのまま美童に聞かせ続けてはまずい、と思ったのか、こほん、と咳払いをすると娘に話しかけた。
「野梨子さん、美童さんが見えててよ。入っていただいてもよろしいかしら?」
 家元が襖を開けると、目にいっぱい涙を溜めた愛娘とその親友が、幽霊でもみたような顔でこちらを見ていた。
 彼女の隣で呆然と立っていた男友達の顔は、やはり文字通り、幽霊のように色が失せていた。
「美童・・・」
「あ、可憐たちの様子がおかしかったから、何があったか訊こうと思って・・・」
 しどろもどろに言う美童の声に、可憐と野梨子は眩暈を覚えたのだった。

 少しの時間を空けて、今度は男三人と可憐、野梨子でそこに集まっていた。
 野梨子たちはいくらなんでも、男性陣に話すつもりはなかった。まだ真相ははっきりしていないし、悠理の名誉に関わることだからである。
 だが、美童にばれてしまった今、残る二人にも一緒に話したほうが良いという結論に達したのだった。
「で?決定的なことを悠理は言ったんじゃないんだな?」
と、ピンクの髪と反対に顔色のほうは青ざめながらも魅録は低い声で言った。
 そんな思わせぶりな出来事が起こったなんてにわかに信じがたい。たまたま具合が悪かったとかで、そういうことじゃないんじゃないか?彼はそう思いたかった。
「でも悠理は“男とそんな仲に”って。そう言いましたわ。あの会話の流れでさすがに別のことだとは・・・」
「“今はまだ言えない”って言ってたからいつか話してくれるつもりなのかも知れないけどね。」
 女二人はさすがに沈痛な面持ちである。あの悠理の様子を見て、それと気づかないはずがなかったのだ。
「でもさ、もしかしたら信じがたいことだけど円満にそういう仲になった相手と、こじれて別れちゃったから嫌な思い出なのかもしれないよ?」
と美童は多少希望的な観測をする。
 全世界の美しい女性を愛していると言っても過言ではないフェミニストの美童である。大事な友人である悠理が女性としてひどい目に合わされたなどとは彼とて信じたくなかったのだった。
「まあ、どっちにしろ今まで誰にも気づかせなかったなんてな。最近の事なのか?」
と魅録は首をかしげる。やはり女性たちほど悲観的に浸ることはせず、比較的冷静である。
「さあ?僕もまったく気づかなかったしねえ。」
 その手の空気に誰よりも敏感だと自他共に認める美童にしてこれである。
「清四郎はどう思う?」
と魅録に話を振られた清四郎。いつもならどういう話題だろうと何がしかの口を挟まぬことはない彼が今日は黙りこくっている。
「ああ、いや、驚きすぎて、なんと言っていいか・・・」
 恋愛問題は彼のもっとも不得意とする分野であるし、何よりいつもペットのような扱いしかしていない悠理のことであるから、驚きすぎて何も言えないのだろう。「さもありなん」と皆は思った。
 悠理の隠し事を見抜く一番の名手のはずの清四郎すら悠理の様子に気づいていなかったのだ。
 それにしてもこの男がここまで取り乱すとは珍しいがな、と魅録は思った。

 彼はここ最近で一つ気づいていることがあった。
 清四郎の目が、悠理を追っていることがあるのだ。
 生徒会室で自分と悠理がアンプをいじりながら談笑しているときに、彼の視線を感じることがあった。
 野梨子とともに登下校しながら正門のあたりで清四郎が見ているのは、野梨子の向こうにいる悠理だった。
 思えばそれは、清四郎と悠理の婚約騒動が落ち着いた頃から少しずつ気になり始めたものだった。

 もしも清四郎が悠理に惚れているのだったら。
 今回の悠理の疑惑が真実で、清四郎の目の前にその男が現れたら。

 清四郎は相手の男を殺すのではないだろうか?

 もっとも、自分にしろ美童にしろ、悠理に惚れているわけではないが彼女は大事な親友の一人である。
 その男が目の前に現れたら自分たちだって、野梨子や可憐だって、そいつを八つ裂きにしてしまうかもしれない。

「と、とにかく、悠理がいずれ女性陣に自分で話すつもりでいるなら今はそっとしておきませんか?」
と言う清四郎の声が掠れている。彼のこんな弱弱しい声を聞くのは野梨子でさえ初めてだった。
 こんなに儚げな様子の清四郎を見ることがあろうとは、倶楽部の誰も想像さえしたことがなかった。
 今回のことがそこまで彼に衝撃を与えうるものだったとは・・・。
「可憐、野梨子。悠理は俺たちには絶対に言えないはずだ。お前たちが支えてやってくれ。」
 悠理の一番の親友は自分だとわかっている魅録だが、性別の壁を感じたのはこれが初めてだった。男も女もない気楽な友人だったのに、それはかなり歯がゆい壁だ。
 いくら悠理でもこんなことはやはり女友達にしか言えるはずがない。
「当たり前よ。あんたたちに言われなくてもそうするに決まってるじゃないの。」
 眉間にしわを寄せて涙を堪えながら可憐は力強く宣言した。



「ね、悠理、話したくなかったら話さなくていい。でもあたしたちがいるのを忘れないでね。」
 火曜日、いつものように部室で大口を開けてお菓子を口に放り込む悠理に、可憐が言った。
 悠理と同じテーブルには可憐と野梨子しかついておらず、二人とも悠理を見つめて優しく微笑んでいた。
 美童は部屋の隅で世界中の恋人に電話をしていたし、清四郎と魅録は黒板の前で魅録の発明品の設計図を前にあーだこーだと意見の交換をしていた。
 皆の気遣いがわかって悠理は少し眉をしかめたが、すぐにいつもの調子で、
「あんがと。」
と花が綻ぶような笑みを返した。
 その悠理の、普段は野生動物のように毅然とした目が一瞬、とある一点を睨んだのだが、誰もそれには気づかなかった。
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