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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2024/05/17 (Fri) 11:29
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2015/02/18 (Wed) 23:50
その時、二人は何を選択するのか?
一部凌辱ネタがあります。

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「か、可憐、何ですの?この雑誌。」
と野梨子が上ずった声をあげた。
 閑人三人娘。男どもは彼女たちを構わず自分たちだけそれぞれどこぞへ出かけてしまった日曜日。
 ふてくされた彼女たちは可憐の家に集まって閑をもてあましていた。
 まあ、せっかく女だけなんだし、と可憐が自分の部屋に来るように勧めたのだ。

 そこで彼女が取り出してきたのは女性向けの雑誌。毎号特集が大々的に組まれ、女性の生き方なんかについて主に載せていることが多い老舗の雑誌である。
 今回の特集は、「満足するカラダ」というタイトルの、セックスにまつわる話題だった。女性の意見、男性の意見なんかがアンケートされている。
「やっぱり男性を満足させることは女として重要なことよ。いつか手に入れる玉の輿のためにも、夫を満足させる手法を学ばなきゃ。」
「可憐だけそういうの学んでればいいだろ。あたいも野梨子もこんな知識、必要ねえよ。」
と悠理が汚いものでも見るような目で雑誌をちらりと一瞥する。
 今日彼女が履いているジーンズの色を映したように白い顔色をしている。可憐からそういう話をされるのに彼女は毎回気持ち悪そうな顔をするばかりで話に乗ってこない。
「そうですわ。必要になってからで結構ですわ。」
 こちらは悠理とは逆にほんのり顔をピンクに染めた野梨子である。
 やわらかい藤色のワンピースは今日も彼女によく似合っている。
「いつ突然必要になるかわかんないでしょう!悠長なこといってたらいざって時に困るのはあんたたちよ。」
と可憐が真面目に力説する。白無地のカットソーは彼女の豊かな胸元を妙に強調している。自慢のウエストに手を当てて力説するさまは、女が見ても迫力がある。
 可憐の視線を避けて目をそらした野梨子はしかし、隣にいる元気の塊のような少女が、彼女自身の着ている青いボーダーのカットソーの色よりも更に青ざめるのを見た。
「悠理?どうしましたの?顔色が・・・」
「あ、あたいはあんなん二度とごめんだ。」
と震える声で俯いて言う彼女。
 その言葉に、その様子に、可憐と野梨子は絶句せざるを得なかった。
「ゆう・・・り・・・二度とって、いま言いましたわよね・・・」
 可憐と顔を見合わせながら野梨子がとぎれとぎれに吐き出す言葉に悠理ははっと顔をあげた。
「あ・・・」
「まさかもう誰かと・・・?」
 可憐にはお子様ランチだと思っていた悠理が経験者かもしれない、そのことが一番のショックなようである。
 そして何より野梨子も可憐も、この悠理の尋常でない様子に何事かを感じ取っていた。
 可哀相なくらい震えている。その震えは彼女の野放図に暴れる髪の先まで伝わっていた。
「ご、ごめん。まだ言えない。まだ・・・」
 か細い声で言う悠理を可憐は思わず抱きしめた。
「何があったの!?誰があんたをこんなにしたの?!」
「可憐!」
 野梨子は思わず可憐をたしなめた。こんな様子の悠理にその質問は酷過ぎる。
「違う!何もない!何もなかったんだ!」
 可憐の腕の中で吐き出すように叫ぶ悠理の目には涙が溜まっていた。
 今は優しくしないでくれ。何もなかったんだから。
 今まで何もなかったことにしてたんだから。
 忘れてたんだから。
「ごめん、今まで気づかせないようにしてきたのに・・・何もなかったんだよ。それでいいだろ?」
 今度は潤んだ声で二人に謝る悠理に、野梨子は涙を我慢した。
 私が泣いてはいけない。
 気づいて上げられなかった私に泣く資格はない。
 悠理が泣かないのに、私たちが泣くわけにはいかない。
 悠理。謝らないでくださいな。謝るのは私たちのほうですわ。
「ほら、だいいちあたいとそんな仲になりたがる男がいるわけないだろ?あたいが男なんかとそんな仲になるわけないだろ?」
と、腕を緩めた可憐の目を見て微笑む悠理は痛々しかった。
 三人の中で一番背が大きくて、一番大食いで、一番暴れん坊の彼女が、今日は一番小さく見えた。
「ごめん、悠理。あたし無神経なこと言った。」
「謝らなくていい、可憐。事故みたいなもんだったんだ。」

 何が?
 可憐が男女のことを話題に挙げたことが?
 悠理に起こったなにがしかの出来事が?

 なにが、事故?

「先に帰る。野梨子、今日は送ってやれない。」
「まあ、お気になさらないで。」
 部屋を出て行こうとする悠理の背中に、しかし可憐は声をかけずにいられなかった。
「悠理・・・」
 だが、彼女は決して振り返らず、そのまま二人との間を扉が隔てた。

「やっぱりあれってそういうことよね・・・」
 無理やりに?だまされて?薬でも盛られて?
 可憐は脳裏に浮かんだ考えをとても口に出せたものではなかった。
 女には辛すぎる。こんなの辛すぎる。
 同性として、友人として、そんな真相だったらと考えただけで吐き気がする。
「まあ、でも決定的なことは何も言ってませんでしたわよ。」
と言う野梨子とて可憐と同じ気持ちである。
 可憐よりも長く(実際は好印象とは対極の想いでではあるが)悠理の笑顔を見てきた野梨子である。
 悠理の身に起きたことが、自分たちの想像通りでないことを強く祈っていた。
 そして、いつそんなことが起きたのか、うかつにも全く気づかなかった自分を責めた。



「あれ?今日は悠理は来てないんですか?」
 校長に行事の打ち合わせで呼ばれていたため一番最後に部室にやってきた生徒会長・清四郎は、部屋の異様な雰囲気を敏感に察知した。
「ああ、今日は風邪気味だって昼くらいに帰ってったよ。」
と応える魅録も同じ空気を感じているのだろう。わけがわからないといった表情をしている。
 清四郎が美童を見ると、彼も金色の長い髪をふわりと揺らめかせて、お手上げ、といったジェスチャーを返してよこした。
 野梨子も可憐も普段どおりに振舞っているつもりなのだろう。しかし二人の間で無言で流れる空気が部屋に息苦しいほどの緊張感を生んでいた。
 月曜日がいつも陰鬱であるのは、仕事の過重ストレスに疲れきった社会人の話である。
 いつも閑をもてあましている彼らにとっては、月曜日は少なくとも昼間は学校に来ることによって退屈だなどと言う必要のない時間が約束される一週間の始まりなのだった。
 しかし今週ばかりはさわやかな一週間の始まりとは言えないようだ。
「どうしたんですか?女性陣は昨日喧嘩でもしましたか?」
と清四郎は自分の指定席に座りながら、今日は自分のすぐ左斜め前に座っている幼馴染にさらりと訊ねた。
 可憐はその清四郎の言葉に、正体なくぴくりと肩を揺らめかせたが、顔だけはいつもどおりの表情でそこらにあった先月号の雑誌を眺め続けた。
 野梨子はというと、こちらは清四郎に幼い頃から付き合っていたせいだろう、ほぼ完全なポーカーフェイスでにっこり端然と微笑んだ。ほんの少しだけ美しい眉根をよせて。
「いやですわ、なんでそう思いますの?悠理の体調が心配なだけですわ。昨日から顔色が悪かったのですもの。」
 一点の曇りもないすがすがしさでそう言い切る野梨子の様子に、清四郎はてこでも動かない彼女の頑固さを思い出した。
 野梨子は何も言いませんね。可憐もこんな顔をしているときは言わないでしょうね。
 清四郎は何事か起こっていることには気づいたが、結託した女性陣の口を割らせることは彼にとってもかなりの難題だった。
 そしてそれは男気があって皆から人望がある魅録にしても、女性の扱いはうまいと自負する美童にしても同じだった。
 男三人で顔を見合わせて苦笑するしか、今のところできることはない。
「野梨子。今日はあんたの家に寄るわ。いいでしょ?」
と可憐が鞄を持ち、立ち上がりながら言った。
「ええ。よろしくてよ。では今日は女同士の話がありますので失礼しますわ。」
と野梨子も立ち上がり、困惑する男どもをよそに二人で部屋を出て行った。
 いつもは世間知らずでガードが必要な少女を送って帰る清四郎にも同行を許さない、女たちの無言の命令に、男たちは間抜け面をさらしてその場に取り残されたのだった。

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