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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2024/05/17 (Fri) 15:37
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2015/02/20 (Fri) 00:33
清四郎をかばって怪我を負う悠理。

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 うぎゃっ、みあ~う・・・
「あれ?いま猫の声がしなかった?」
 しかもかなり悲痛な叫び声が。

 夕刻の公園。月曜日の放課後、悠理は清四郎と一緒に彼の家へと向かって歩いていた。
 明日は数学の小テスト。清四郎宅で勉強させてもらうのだ。
 悠理は清四郎の返事も聞かずに、その声がしたほうへと駆け出した。
 犬の声も聞こえた気がしたのだ。

 悠理が現場へ着くと、怯えた子猫に野良犬が迫っているところだった。茶色の柴犬なのでさして大きくはないのだが、子猫の目からするとやはり親より大きい敵だった。
「こらあ!やめろ!怯えてるじゃないか!」
と悠理が怒鳴ると、犬はびっくりして彼女のほうを見た。
 それで犬のほうは子猫を苛めていたつもりはなく、ただ可愛がろうとしていただけなのだろうと察せられた。
 犬は「きゅうん」と声を挙げると、すごすごとその場を離れていった。
「あちゃ、ちょっと可哀想だったかな。」
と悠理はその後姿を見送った。
「犬ですか。」
「ん~、可愛がろうとして怯えられてただけみたい。」
 子猫はいまだに毛を逆立てて、続けざまに現れた犬よりも大きな者たちを目を見開いて見つめていた。
 清四郎は不意にその猫を落ち着かせようと手を伸ばした。
「あ、バカ、待て。」

 まだ興奮していた三毛の子猫は、目の前に差し出された清四郎の手にますます怯え、飛び掛ってきたのだった。
 清四郎としてもそれを避けることは不可能ではなかった。しかし目の前に別の手が伸びてきた。
「っつ!」
「悠理!」
 子猫の爪は成猫に比べればまだ短く軟らかいとはいえ、やはり鋭い猫の爪である。
 清四郎をかばった悠理の右腕がみるみる血に染まった。制服が夏服で半袖だったのがまた悪かったのだ。
 子猫は怪我した手を押さえる悠理の様子に驚いたのか一歩飛び退った後、茂みへと逃げていった。

「すいません、まだ興奮してるとわかってはいたんですが・・・」
 清四郎はハンカチで悠理の傷口を押さえながら素早く公園内を見渡した。傷口を洗わねば。
「お前って案外そそっかしいのな。」
 悠理は苦笑している。血がだらだら流れているのに奇妙に明るい顔をしている。
「痛みませんか?」
 ようやく見つけた蛇口の栓をひねりながら清四郎が眉根を寄せる。
「あー、これっくらい平気。タマやフクにもよくひっかかれてるし。うあっつ。」
 最後の叫びは水が傷にしみたことによるものだった。
 傷口を洗い流してみれば、傷はそう深くはないようだった。長さも3センチ足らずといったところか。
 もう血もほとんど止まっている。
「思ったより浅かったようですね。よかった。」
 清四郎がほうっとため息をついた。
「だから平気だって言ったろ?」
 悠理がまだ水滴のしたたる左手で、気遣わしげに右腕の傷口を覗き込んでいた清四郎の頭をはたいた。

 だが、清四郎は悠理の傷のあるほうの腕を、くいっと取り上げた。
「痕が残らなければいいんだが。」
と傷口に唇をつけた。
 柔らかい温かい感触に、悠理は頭から湯気が出るほど真っ赤になった。
「だ、だから、大丈夫だって!」
と叫んで腕を清四郎の手から奪い取る。
「それに、痕が残っても・・・」
 清四郎は小さく呟いた悠理の声を聞き逃さない。
「残っても?」
 悠理はそこで言いよどんだままだ。清四郎を上目遣いに見上げている。
 頬が赤く染まったままで、なんとも反則的なまでに愛らしい。
「悠理。その続きは?」
 もう一度清四郎は促してみる。
「その・・・清四郎をかばってついたんだから、女の勲章だなって・・・」

 悠理はじっと観察していた。みるみる自分以上に赤くなる清四郎の顔を。
 お、面白いかも。

「そ、それは男のセリフです!」
 冷や汗を流しながら叫ぶ清四郎に、悠理はくすり、と笑った。
「わあい。清四郎が照れてる~。」
とにっこり笑う邪気のない彼女の笑顔に、清四郎は苦虫を噛み潰した。
「と、とにかく、悠理を守るのは僕の役目なんですから、悠理は僕をかばおうなんて思わなくていいんです!」
などと、普段の彼であれば口が裂けても言わないだろうセリフまで吐いてくれるので、悠理はにこにこが最高潮に達した。
 彼の方としても彼女のそんな顔を見ていたら、次第に力が抜けてきたのだった。

「とりあえず悠理。」
「なに?」
 こほん、と一息ついて悠理をじと目で睨む清四郎に、悠理は首をかしげる。
 彼がすうっと息を吸うのにあわせて彼女まで力が篭る。
「そこまで言ってくれるのなら、そろそろ僕と付き合うのをOKしてくれてもいいんじゃないですか?」

 彼が彼女に「好きです。僕と付き合いませんか?」と言ったのは3ヶ月前。
 しかし彼女は固まってしまい、それにOKの返事を返すことはなかった。
 そのままなんとなく時は流れ、彼女のほうでも彼に対して好意を持ってくれているとやっとわかったのが2週間前。
 それでも進展がないままに日常を過ごす二人なのだった。

 彼女の反応をうかがう清四郎は、だが、悠理がきょとん、とした目で彼を見つめるのに気づいた。
「なんなんですか。その顔は。まさか忘れてたんじゃないでしょうね?」
「いや、てえか・・・」
 悠理はぽかんとしたままで一度空を見上げて、また彼へと目を戻した。
「あたいたち、まだ付き合ってなかったの?」
 今度は清四郎が空を仰ぐ番だった。
「いつの間にそういう話になってたんですか?」
 困ったような視線を戻してくる清四郎に、悠理は相変わらずぽかんとしたままで応えた。
「だから、2週間前に、あたいもお前が好きだって、言ったよな?」

 好きだって言ったって?
 あの時は確か女性陣が『好きでもない相手に好きと言われてもありがたいけど迷惑だ』という話をしてたんですよね。
 そう。まるでさっきのあの犬のような僕の立場だったので内心ひやひやしていたんですよ。
 そしたら悠理が『でも清四郎に言われるのは嫌じゃないぞ。』って言って、皆から二人してからかわれ倒したんだった。

「確かにあれでお前の気持ちはわかったが、あれがOKサインだとは気づきませんでしたよ。」
 片手で目元を覆う清四郎の顔は再び真っ赤だ。
「なんだよ、お前もこういうことでは頭わるいんだな。」
 悠理も顔を赤らめている。少し怒ったような顔が呆れている。
「こういう分野は苦手なんですよ。」
と清四郎はしゃがみこんでしまった。
 悠理はそんな彼が可愛く見えた。だから彼の前に彼女もしゃがみこんだ。
「かわいいぞ、清四郎。」
と彼の顔を覗き込む彼女を、清四郎は一瞬恨めしげな目で見返した。
 そして急に腕を彼女のほうへ伸ばすと、素早く自分のほうへと引き寄せた。

「もう二度と僕をかばおうなんてするな。」
 ぎゅっと抱きしめる清四郎の腕が苦しいほどだ。
 いや、その彼の声に滲む彼の感情こそが彼女を苦しくするのだ。
 だから、彼女も言った。
「お前こそあたいをかばわなくていいからな。あたいはお前よりスピードだけはあるんだから。」
 ん、と真剣なまなざしで清四郎の目を見る悠理に、彼は苦笑した。
「でもかばわずにいられないんですよ。」

───悠理のことが好きだからです。
───あたいもお前のことが好きだからついかばっちゃったんだよ。
───もう。ああ言えばこう言うんだから。減らず口をたたくんならこうですよ。

 ちゅ。

 その瞬間、時間は確実に止まった。

「さ、早く帰って消毒しましょう。洗っただけじゃ足りませんよ。」
 清四郎は悠理の怪我をしていないほうの腕をとった。彼女の鞄も彼が持っている。
「ん。」
と頷く悠理だった。

 二人の顔が赤いのは夕陽のせいだけじゃない。
 だけど、きっと家に着くまでにはいつもの色に戻ってるかな?
(2004.9.20)
(2004.9.24公開)
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