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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/02/02 (Mon) 23:57
「東京の少年」第2回。

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「参ったな。うちの小学生かよ。」
と魅録が頭を掻いて唸った。
 ここは野梨子宅。受験勉強はさておき、これは非常事態だというので魅録と美童も緊急招集された。
 清四郎も用事が終わり次第こちらに来ることになっている。
 昨今、中高生の間でのドラッグの取引が社会問題化していると言われる。聖プレジデントにはそんなものに手を出すような人間はいないかと言うと、実はそうでもない。金があるからこそ、親の過剰な期待というストレスを受けやすい人間が多いからこそ、危ないのだ。
 実は彼らが役員をしていた間に二度ほどそうしてドラッグに手を染めた高等部の生徒を処分したことがある。一件は倶楽部の手の届かないところで職員会のほうで闇に葬られ、もう一件は逆に倶楽部のほうで手を打ち、職員会や理事会に知られることなく休学させ病気療養と称した更生プログラムに放り込んだ。
 高等部では現在のところそういうものに手を出している人間はいないはずである。
「ミセス・エールもまたショックを受けますわ。」
 心優しい理事長。しかし教育者である彼女は厳粛で確固とした信念を持って学園経営をしている。
 職員会で生徒が闇に葬られたときにはさすがに毅然としていたが、かなり落ち込んでいるようだった。
「でもあいつ“研究用”って言ってた。清四郎みたいな趣味の奴かな?」
という悠理の言葉をだがしかし、簡単に信用するわけにはいかない。
「たとえ自分で使うんじゃなくても違法行為には違いないだろ。」
 魅録が呆れたように言う。そこに、
「それ言うなら清四郎の薬の調合も違法じゃん。それにあいつ麻薬も味で判別したりするし、あれってどうなのさ。」
と美童がツッコむ。
「今の問題は清四郎じゃないでしょう。聖プレジデントの小学生がドラッグを買ってたっていう事実よ。」
 可憐がそれた話題を元に戻す。今更自分たちが違法行為のどうのと言える立場じゃないのを皆はきれいに忘れているようだ。
「で?悠理。その小学生ってどんな奴だった?」
「なんか見覚えがある奴だったんだよ。誰だっけ?小坊の頃の清四郎に似てるからそう思うのかな?」
「小学生の頃の清四郎ってあんなだったの?」
 可憐は遠目でしか見なかった少年の姿を思い出しながら言った。彼女は中学入学時からしか彼らを知らない。言われてみれば初めて会った頃の清四郎はあんな感じだったかもしれない。
「見覚えがあって道理ですわ。彼は小学部の児童会長ですの。」
 野梨子がふうっと溜息をついてから言う。
「確かこの間、高等部と同様に改選されていたようですけれどね。元児童会長。生徒会役員だった私たちとも何回か会ってますわよ。」
「あ~、あの喜多屋(きたや)か?」
「喜多屋 弓彦君?」
と、魅録と美童が何かの行事の折に見かけた彼を思い出しながら言った。
「そっか、喜多屋くんか。」
 可憐も手を打った。

 地方出身の元国会議員の孫息子。祖父である元議員は首相候補とまで目されていたが、暗殺ではないかと噂されるほど急に病死したのが10年前だ。
 小学部ではトップの成績。自信に満ちた様子で周囲を引っ張るリーダー格の彼の姿に、聖プレジデントのもはや名物とまで言われる高等部の元生徒会長の小学部の頃の姿を重ねる職員は多い。

「う~ん、もともと清四郎に似てるって言われてる奴だったがそんなところまで似てるのか。」
 魅録が腕組みをとかずに天井を見つめる。
「小学部の頃の清四郎そのまんまって感じ?」
と、可憐が隣であぐらをかく悠理に尋ねた。
「う~ん、あたいはあの頃の清四郎の記憶ってほとんどないんだ。幼稚舎の頃の記憶であたいより弱いとしか思ってなかったし。」
「そうですわね。あの頃は私たち、ほとんど言葉を交わしたこともありませんでしたわね。」
と野梨子がしみじみと遠い目をして言う。

 ちくん

 悠理は胸の中にトゲが刺さるのを感じた。その理由は自分でもよくわかっている。
 幼稚舎の頃から知ってるはずなのに、あたいは清四郎のその頃をよく知らない。
 いつだってあいつの一番近くに、あいつと一番長くいたのは野梨子。
 中学生の頃はずっと彼らが付き合っているのだと思っていた。ちぇ、嫌なことまで思い出したな。

 今でも野梨子と帰っていく彼の後姿に胸が痛まないわけじゃない。
 でもこれは二人で決めたことだから。
 卒業までは隠し通すと、一緒に決めたから。
 野梨子は悠理にとっても大事な女の子だから。

「ふ~ん、初めて会ったときの印象じゃ清四郎はかなり悠理のことを気に入ってそうだったけどな。」
 突如として魅録が言ったので悠理は飛び上がるかと思うほどに驚いた。
 彼女の瞳に揺らめいた翳りに気づいたというのか?
「ええ。前にも話したと思いますけど、清四郎ったら中学生のときにクラス委員を一緒にするようになってからかなり悠理の肩ばかり持つようになったんですのよ。それで喧嘩したりしましたわ。」
と野梨子は呆れたように言う。そして、何事か気づいたように首をかしげた。
「そういえば、小学部の頃も悠理の噂話を聞く時は楽しそうでしたわ、清四郎。」
 さもありなん、と思う魅録の目の前で悠理が固まる。
 え?そうなの?というきょとんとした表情をしている。
「なるほど。清四郎の本性はその頃から見え隠れしてたんだ。」
と美童が手を打つと、
「僕の本性って何ですか?美童。」
と皆の聞きなれた低い声が話に割って入った。
「せ、清四郎!いつからそこに・・・」
 美童の顔が青くなる。
「たった今ですよ。まったく、非常召集だというから急いで来てみれば何の話ですか。」
「小学部の頃から清四郎が悠理をペット扱いしたがってたって話よ。」
と可憐がにやりとしながら言う。
 わずかに顔を赤らめて絶句する清四郎は無意識のうちに、同じく固まって絶句している悠理と顔を見合わせた。
 魅録はというと、この二人の絶句している理由がわかっているから、助け舟を出すことにした。
「お前さんそっくりの小学部の元児童会長が今回の発端だからってことで話が地すべりしたんだよ。」

 どうせ美童も可憐も、ましてや野梨子もまったく疑ってねえし、そこで絶句しちゃおしまいだろうよ。お二人さん。
 これまでばれなかったのが不思議だな。清四郎がこんなに可愛い奴だったとは意外だ。
 魅録は内心でそう思いながらにやりと清四郎に目配せする。

 大丈夫。ばれたわけじゃねえから。

 その無言のセリフに清四郎はほっと一息つくと、
「じゃあ、僕にも最初から説明してください。」
と話を元に戻させた。
 どうせ二人の事情を知らない皆はさっきの清四郎の短い沈黙を、単に話が見えなくて怪訝な顔をしたくらいにしか思ってないだろう。

「なるほど。話はわかりました。小学生にまでそんなものを売りつける不届き者はどうにかしないといけませんね。」
 もちろん、彼らがどうこうしたところで日本中のドラッグをどうにかするわけにもいかない。
 今回のところはその薬を売っていたほうの少年を改心させれば充分だろう。
「ねえねえ、僕ひとつ疑問なんだけど。」
「何ですか?美童。」
「清四郎ってどこで麻薬の勉強したの?」
 その素朴かつ、今まで誰もあえて触れることができなかった疑問に、美童が手をかけてみた。
 その場にいたメンバーは皆かたまった。
 美童、それは地雷だ、と思いながら。
「知りたいですか?」
「うん、知りたい。」
 清四郎の笑顔が怖い・・・悪魔の笑みだ。
 美童は内心で冷や汗を滝のように流していた。
「知っても後悔しませんか?」
 悠理は清四郎から漂う妖気を感じた。
 野梨子と可憐はお互いに両手を握り締めあっている。
 魅録もさすがに青ざめている。
「どうしても知りたいですか?」
 あくまでも笑みを絶やさない清四郎に、美童は降参した。
「すいません。忘れてください。」
「よろしい。」

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