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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/02/02 (Mon) 23:55
女三人の帰り道。悠理はとある少年と出会う。

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 たまには女三人で勉強でも、と言い出したのは可憐だったか。
 いつも清四郎に猛特訓を受けている悠理がどんな風に成績を伸ばしてきたのかを自分の目で見たいという。
 幸い、というか、悠理にとっては不運というか、今日は清四郎は家の用事で勉強会はできないらしい。
「だいたい、部室を明け渡してから六人で集まることも減ったでしょ?悠理と一緒におしゃべりしたのいつが最後よ。」
「そうですわよ。しょっちゅうお隣まで来てるのにうちには来てくださらないんですもの。たまには私のおうちにも来てくださいな。」
と野梨子にまで言われては断ることができない。
 まあ、いいや。野梨子のうちに行けばいつも美味しい和菓子が食べられるのだし。と悠理は舌なめずりをした。
「この子ったらお菓子だけが目当てみたいよ、野梨子。」
 その様子を見ただけで可憐には目論見がばれてしまったようだ。
「勉強も一応するじょ。清四郎に渡された明日までの課題も、今日の授業で渡された課題もやらなくちゃいけないんだ。」
 およそ自分たちが少し前まで知っていた悠理らしくないセリフに可憐と野梨子は眼を見合わせて苦笑した。

「正直言うとね、悠理が急に剣菱のことを考え出したのも不思議なの。どんなに周りが将来のことを考えはじめたからって悠理だけは流されることはないって思ってたから。」
と校門を出てから可憐が言った。
「あたしたちだってずっと馬鹿騒ぎしてきたじゃない?だからこれがいつまでも続くような気がしてたの。」
 誰よりも現実的なようでいて、誰よりも母親と家のことを大事にしているようでいて。
 それでも誰よりも夢見がちだった可憐なのだった。
「そうですわね。私もそれは思ってましたわ。清四郎も魅録も他所の大学を選んで、美童もそのうち本国に帰ってしまいますわ。それが寂しいんですの。」
 有閑倶楽部の連中と仲良くなるまでは幼馴染の清四郎にしか心を開けず友達の作り方もわからなかった野梨子である。今では倶楽部外の付き合いもまったくないわけではないが、倶楽部への依存度はかなり高いようだった。
「別にばらばらになっても会えるだろ?友達なんだから。」
と悠理がきょとんとした顔で言う。
「まあね、それはそうなんだけどね。本当、あんたのそういうところに救われるわ。」
 可憐が苦笑した。
「悠理に感傷は似合いませんわよ、可憐。」
と野梨子が鈴を転がすようにころころと笑った。
「おい、馬鹿にしてるか?野梨子。」
「いいえ。それが悠理のよいところですわよ。可憐も言いましたでしょ。そういうところに救われるって。」
 すると、可憐がぽつりと呟いた。
「友達のままだったらまた会えるわよね。」
 友達のままだったら・・・?
 悠理にはその言葉が引っかかった。
「可憐?それってどういう意味だ?」
と悠理は問うた。
「ああ、恋人とかだったら別れちゃったらやっぱりそのあと連絡って取りづらいじゃない。でも友達だったらそんなこともないからよかったわって。」
「友人同士でも喧嘩別れすることはありますわよ。」
と野梨子は何を今更、という顔をして言う。
「そういう意味じゃないのよ。」
と可憐は苦笑する。
 悠理はその可憐の様子にひやり、とする。自分と清四郎のことを気づかれたのだろうか?
 実のところ、悠理も清四郎も自分たちの事が倶楽部の他の連中に漏れることを極端に恐れていた。六人のバランスを壊しかねないからだ。
 二人のことを唯一知っている魅録もその意志を汲んでくれているようで、今までどおりに接してくれる。それが本当にありがたかった。
「悠理?どうしましたの?顔色が悪くてよ?」
と野梨子が心配そうに声をかけた。
「ん?そうか?腹へってるだけだよ。」
と悠理はちょっと野梨子に微笑み返すことでごまかそうとした。
「本当に悠理ったら食欲ばっかりなんだから。」
と可憐が呆れたように言った。

 くすくすと苦笑する野梨子の表情が急に変わった。
「悠理。あそこ、聖プレジデントの小学生じゃありません?」
 ん?と悠理が野梨子の視線の先を追う。
 聖プレジデント小学部の学ランに半ズボンという制服にマフラーを巻いた少年が、私服の少年たちと会話している。
 高等部の自分たちの帰宅時間にまだこのあたりをうろついている小学生は珍しい。聖プレジデントの坊ちゃん嬢ちゃんで学習塾に通う姿もあまり普遍的とは言いがたい。
 道の端で私服の少年五人に囲まれる少年は少し顔が緊張している。全員小学校高学年くらいのようだ。一番背の高い少年は可憐くらいはある。静かに会話しているけれど、たかられているのではないのだろうか?
 悠理は二人の友人と目顔で頷きあうと、少年たちの方へと足を向けた。

「おい、ボるなよ。俺らの相場はこれだろ?そんな値段じゃ誰も買えねえよ。」
 少年特有の少し高い声がする。そういや自分らの六、七年前もこんな感じだったよな。清四郎が声変わりした時期をあたい、そういや知らないや。
 それにしても、と悠理は声をかけるのを一瞬ためらった。これはたかりにあってるというより何かを取引してる雰囲気だ。
 少年らしくゲームソフトかレアもののグッズの交換か?
「渋谷にいきゃこの倍はするぞ。別にお前らじゃなくても買う奴はいくらでもいるよ。」
と、少しばかり年かさに見える一番背の高い私服の少年が残りの少年たちに言っている。
 その手にあるのはチャック付ポリ袋?ラムネみたいな白い錠剤が中に入っている?
 悠理はそれを見たことがあった。倶楽部の皆で夜遊びをしに行った渋谷のクラブの片隅で自分たちと同年代の少年たちが取引していた。
 取引をするうちの一人が魅録の顔見知りだったので一緒に叱り飛ばした。
 そうだ、あれは・・・
「おい、それは小学生が使っていいもんじゃないぞ。」
 大人になっても使っちゃいけないけどさ。
 急に声をかけられて少年たちが全員飛び上がるほど驚いたのが目に見えてわかった。
「あんたは・・・」
と聖プレジデントの少年が悠理の顔を見て目を見開いた。
 悠理はそれに構わず、中学生くらいの少年が慌てて隠そうとしたビニール袋をさっと取り上げた。
「あたいらの目の届くところでふざけたことしてんじゃねえよ。」
 彼女がぎろり、と目をむくとその少年は文字通り蛇に睨まれたカエルのように震え上がる。
 ここらの不良学生の間ではまず歯向かってはいけない相手として剣菱悠理と松竹梅魅録はインプットされていた。いや、中高生だけじゃない、ここらのヤクザ連中にまでそれは行き渡っていることだ。
 彼はその不文律を知っている種類の人間と見える。
「くそっ!」
「うわっ!」
「悠理!」
と離れたところで見守っていた可憐が叫ぶ。
 追い詰められた少年が持っていた紙袋のうちの空になった一つを悠理に投げつけ、彼女がひるんだ隙にダッシュして逃げ出したのだ。
 他の少年たちも蜘蛛の子を散らしたように別々の方向へ逃げ出した。
 だが悠理には彼らの動きなどまるでスローモーションだ。
 あやまたず、聖プレジデントの少年の首根っこを掴まえた。

「くそっ。離せ!高等部の奴に用はない!」
と叫ぶ少年の姿を見て悠理は既視感にとらわれた。
 さらさらの黒髪。脱色なんかしたことないんだろう。今の野梨子より少し低いくらいの身長。
 短パンの制服を着て学校指定の革鞄をぶんぶんと振り回している。
「これは自分で使うんじゃない!研究用だ!」
 悠理の手を振り払うことが出来ないと思ったのか少年は彼女のほうを向いて言った。
「へ?」

 清四郎?

 悠理はその人物を思い出して少し力が緩んだ。
 少年はそのわずかの隙を見逃さなかった。

 バン!
「うわっ」
 渾身の力を込めて鞄を彼女の足にぶつけて見事な脚払いを食らわせると、一目散に逃げていったのだった。

「あ、畜生!名乗っていけ!」
と悠理は叫ぶがもう彼には届いていないだろう。油断してしまった。
「悠理!大丈夫?」
「大丈夫ですの?」
と可憐と野梨子が駆け寄ってくる。先に逃げた少年たちにも連れとはばれなかったようだ。よかった、と悠理は思った。
「どうしましたの?悠理があれくらいの子に逃げられるなんて。」
と野梨子は驚いている。
「いや、ちょっと油断したんだよ。小坊だからって甘く見ちまったな。」
 悠理は口を尖らせて頭をぽりぽりと掻きながら立ち上がった。
「でもなんであの子を掴まえたの?被害者じゃないの?」
と可憐が首をかしげる。
 悠理は先ほど取り上げたポリ袋を二人に示した。
「これを取引してたんだ。あいつは客。」
「これ・・・!」
「まあ、ドラッグじゃありませんの。」
 三人娘は顔を見合わせた。

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