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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2024/05/17 (Fri) 11:13
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2015/03/22 (Sun) 23:44
二人を流す、熱。
「Siesta」様別室に投稿した作品。

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「あ~あ、あっけなくクスリを飲まされるなんて、本当に馬鹿だな。」
と、清四郎はネクタイを緩めながら溜息をついた。
 少し暗い室内。
 清四郎は狭い部屋をますます狭くしている小さな応接セットのソファーに腰掛けて、ベッドですやすや眠る悠理を見ていた。
 その寝顔は本当に安らかで、ちょっとやそっとでは目覚めない勢いだった。不埒者に飲まされたクスリの影響で熟睡しているのだった。



 今度、清四郎の父が在籍している出身大学医局が心臓外科関係の学会を主催することになっていた。
 会場となるのは剣菱系列のホテル。
 そこで、事前打ち合わせと称した営業の一環であるレセプションが今夜開かれた。ホテルの一角のパーティー場である。
 清四郎は、父にひっぱられてしぶしぶ参加していた。父は勝手に彼のことを医学部志望として紹介する。
 実際のところ、医学部のある大学よりも聖プレジデントを選ぼうとしてるんですけどね、と思ったがあえて何も言わずに営業用スマイルを惜しげもなく振りまいていた。

「あれ?清四郎じゃん。あ、おっちゃんも。」
と声をかけてきたのは悠理だった。
 今日はビジネスパーティーに借り出されたせいか、彼女にしては珍しくパンツスーツである。ただし上着の襟元から覗くのは黒い襟なしのシャツで、スーツも目が覚めるような真っ赤だった。よく見るとうっすらペイズリー柄が染めこんである。
「やあ、悠理くん。医局長に強引に引っ張ってこられたんだよ。」
「そっかあ、おっちゃんもしがらみって奴?大変だね。」
「悠理こそなんでこんなパーティーにいるんですか?あなた好みの集まりじゃないはずですが・・・」
 いくらここが剣菱系列のホテルで、学会のスポンサー企業の中にやはり剣菱関係の医療機器メーカーが名を連ねてるとは言っても、系列企業のささいなパーティーすべてに出席するほど悠理も暇ではない。
「だからあたいもしがらみ。なんか豊作にいちゃんの仕事関係の人になぜかあたいが付き合う羽目になっちゃって。」
「悠理さん、お知り合いですか?」
と彼らの話に割って入ってきたのは、まだ若そうなスーツ姿の男だった。
 そういえばさっき壇上で紹介された中にいた顔だ。確か外資系大手製薬会社の営業部長でしたか。この若さで部長とは中々・・・
「ああ、あなたの顔は見たことがありますよ。以前悠理さんと婚約されていた。菊正宗先生の息子さんでしたっけ?」
と彼は一般的に見て優しげな好青年という顔を、ますます柔らかく微笑ませた。
「悠理、こちらは?」
 その男の視線がなんとなく自分を値踏みしているように感じたので、清四郎はわざと自分から名乗らずに悠理に任せた。彼とは当然薬剤の営業で面識があるはずの父親に訊かずに。
 この視線はなんだ?別にそのケのある人の視線とも違うし。僕を菊正宗病院の跡取りとして値踏みする視線ともまた違う。
 ということは悠理の元婚約者としての僕を見てるってことか。
「ああ、今日のしがらみの相手、アウスレーゼ製薬の部長で上野原隼人サン。」
「しがらみの相手とはひどいなあ。」
 上野原は学生時代にラグビーをしていたとかで少しがっしりした体格をしている。身長は清四郎より5センチは低そうだ。
 好青年といった第一印象を与える風貌がやり手の営業マンとして最大の武器なのかもしれない。
「上野原君と悠理君が知り合いだとはね。」
と菊正宗修平は首をかしげた。
「ああ、僕は豊作と高校時代にクラスメイトだったんです。」
「ほお、初耳だな。上野原君、こっちはうちの馬鹿息子の清四郎だよ。悠理君と婚約しとったこともそういえばあったな。」
「あんなん婚約してたうちに入るかよ。」
と悠理が顔をしかめた。
 清四郎はなんとも言いようがないのでただ苦笑していた。
「じゃあ、今は悠理さんはフリーなんですか?剣菱のお嬢さんなんだから見合い話は山とあるんじゃないの?」
と上野原はにっこりと悠理の顔を覗き込んだ。
 なるほど、そういう魂胆ですか。それで悠理をパーティーに誘った、と。
 清四郎には彼の人の良さそうな笑顔の下の本音が丸わかりだった。
 しかし、彼自身も同じようなものに目がくらんだ過去があるし(もっとも彼のように悠理を手なずけようなどとはしなかったが)、悠理もそこまで馬鹿じゃなかろうという期待もあったので何も言わなかった。
「そんなんはないよ。とうちゃんもかあちゃんもあたいが自分で好きになった相手と好きに結婚しろって言ってるから。」
 剣菱万作・百合子夫妻は、雲海和尚に喝を入れられて以来、目が覚めたのだろう、愛娘もついでに愛息子も結婚は好きにしろと方針変換している。
 心配しなくとも剣菱の身代は豊作が無難についでくれるだろう。彼に足りないのは大胆さだけなのだ。
「そうですか。悠理さんは美人だから引く手あまただと思うんですけどね。」
「上野原君、それ以上はセクハラになるんじゃないかね?若い女医連中も混じってるから気をつけんとな。」
と修平が釘を刺した。彼にも上野原の魂胆がわかったのだろう。
 ナイスフォローですよ、親父。と清四郎は何も言わずにグラスを傾けた。

「おい、本当にお前も行かんのか?」
と修平はタクシーに乗りながら息子に言った。
「これ以上堅苦しい席はごめんですよ。先に帰っておきますから。」
 修平はそのまま二次会に流れて行くことになった。
 清四郎は父と別れてぶらりと電車で帰ることにした。

 ふと、清四郎の視線の先、上野原と連れ立って歩く悠理が目に入った。
 二人も車に乗らずに歩いていた。別のバーで飲みなおすようだ。
 パーティー会場で上野原は悠理の食欲に呆気に取られつつも、彼女が何よりも大好きな食べ物の話題をして彼女の気を引くことに成功していた。
 彼の魂胆に悠理も気づいていると思っていたがどうも怪しい気がしてきた清四郎は、二人のあとをついていった。

「で?今のはなんですか?上野原さん。」
「せ、清四郎くん!?」
 清四郎の目に入ったのは、上野原から手渡されたグラスの酒を飲んでしばらくするとコテンと眠ってしまった悠理の姿だった。
 あいつがこんなに簡単につぶれるタマか!
「自分の会社の製品の信用を落とすような真似は二度としないほうがいい。」
 おおかたアウスレーゼ製薬の主力商品である睡眠薬を使ったのだろう。製薬会社の営業は試供品の薬を持ち歩いている。もっとも最近では睡眠薬に関しては厳しくなっていて偽薬で剤形だけ真似した見本しか社員に渡さないところも多い。
 にっこり笑った清四郎の目がしかし笑っていなかったので、上野原は震え上がって凍りついた。
 フリーズした彼をその場に残して、自分が口をつけたぶんのグラスの伝票もしっかり彼に渡して、清四郎は悠理を抱き上げた。

 とりあえずどのクスリだろう?
 開発中の製品とかいうのでないなら安全性はある程度は保障されている。
 アウスレーゼの発売中の製品なら、短時間作用型のスリーパーか、長時間作用型のラルゴか。
 あっさり寝た姿からするとスリーパーだった可能性が高いな。それなら効果が切れるまで3時間というところか。効くのも早いし切れるのも早い。覚醒後の眩暈も少ないのでいい薬と評判だ。
 しかし営業が睡眠薬の真薬を手に入れられるかってのもあるな。別の薬じゃないことを祈りますよ。

 それにしてもタクシーが見当たらない。
 回復の兆しを見せているとはいえ不況でタクシーが余っているはずだ。
 それなのに今日に限って車が見当たらない。週末だからか。どこかでイベントでもあっているのか。
 悠理の家に電話すれば車はすぐにもやってくるだろうし、今夜のことを豊作に報告したほうがいいとは思うのだが、清四郎はそこらのシティーホテルに入ることにした。
 車が来るまで眠った悠理を抱えておくのも目立つし、飲んだのがスリーパーならすぐに目が覚めるだろうから、それから送っていけばよいと判断したのだ。

 清四郎はベッドに悠理を横たえると、背広の上着を脱いだ。
 週末というのにツインルームが一つ空いていてよかった。
 そして冒頭のセリフに戻るのである。



「ん・・・」
「悠理?」
 彼女は少し身じろぎしたが、目が覚めたわけではなさそうだ。
 酒の影響と副交感神経の作用で血管が開いた影響とでか、彼女は寝たままスーツの上着のボタンをはずし始めた。
「ああ、暑いんですね。」
 最初に上着を脱がせてから寝かせてやればよかったな、と思いながら清四郎は悠理の体を抱き起こした。
 背中から手を回して上着を脱がせてやる。
 ふわり、と彼女の柔らかい髪が彼の首筋をくすぐる。さわやかなシャンプーの匂いが清四郎の鼻を掠めた。
 清四郎は胸が一瞬高鳴るのを感じた。
 悠理相手になんて気分になってるんだ。

 上着をそっと背中のほうへ抜く。
 すると、白い肩がさっと目の前に現れた。
「な、タンクトップじゃないですか。」
 彼女が着ていたのは黒いシャツではなくタンクトップだったのだ。

 危ない奴。
 あのままあの男に連れ込まれてたら簡単に餌食になってたのでしょうね。
 本当にオンナの自覚がない奴だ。そんなに無防備に寝てたら、生物学的に女なのかどうかそのまま確かめてやるぞ。

 彼の動きが一瞬止まった。
 彼女が、肩が夜気にさらされて寒くなったのか、清四郎の胸に頬を摺り寄せてきたからだ。

 あぶない!本当にあぶないぞ!悠理。

 清四郎は冷や汗が滝のように背中を流れ落ちるのを感じた。
 よりにもよって悠理にオンナを感じるなんて不覚だ、と思いながら。
 そしてごくり、と唾を呑んだ。

 無骨な手がそっと動く。
 ふわり、と柔らかいものに触れる。
 確かに見た目どおりに小さい胸だな、と彼女が起きていたら殺されそうなことを考える。
 胸の感触よりも、つけているブラジャーのある種ごつごつした感触のほうが手に残るくらいだ。
 でも、柔らかい。
 やっぱり悠理も女の子なんですねえ。

 清四郎はほんのり笑うと、悠理をきゅっと抱きしめた。
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