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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2015/03/23 (Mon) 00:23
「君という花」のサイドストーリー。ちょっとコメディ。

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「近頃、悠理が綺麗になりませんでした?」
 放課後の生徒会室。急に野梨子が言い出したセリフに、残りのメンバーは茶を吹き出しそうになった。魅録にいたってはごほごほと咽ている。
「ちょ、大丈夫?魅録。」
と隣に座る可憐が魅録の背中をさすってやる。
「わ、わり。」
「大丈夫ですの?魅録。私そんなにおかしなこと言いましたかしら?」
 野梨子がおろおろしながら美童や清四郎の方へ訊ねる。

 今日は悠理は生徒会室にいない。
 どうやらヨーロッパより帰国した母・百合子の友人に引き合わされるために強制的に帰宅させられたものらしかった。
 娘のことをよく理解している剣菱家のことだ。夕食に豪勢なディナーで彼女をなだめるのだろう。

「ま、そういう噂が立ってるのは事実だよね。」
と美童がにやりとしながらちらりと黒髪の男を見遣る。
 見つめられた清四郎のほうではその視線に気づいたのか気づかなかったのか、表情を変えずに骨董雑誌を眺めている。
「そうですか?別にいつもと変わりないと思いますけどね。」
「そうだよな。変わりなく見えるけど・・・」
 一息ついた魅録が続けた。
「あたしの目から見たら噂が立つのも無理ないって気がするけど?」
「僕もそう思う。」
 倶楽部の中でも恋多き二人が手を上げる。意味深な目線を交し合っている。
「やっぱ魅録も清四郎もこういう方向にはうといわよね。」
 可憐がうんうん、と頷きながら言う。
 美童はそれには頷かず、天井に目を向ける。
「誰かさんは気づいてて気づかない振りしてるだけだと思うけどね。」
と小さく呟いた。
「なにか言いまして?美童。」
と野梨子が訊ねるが、美童は、
「なんでもないよ。野梨子。」
と微笑んだ。
 だって誰かさんにはちゃんと聞こえてたみたいだからね。と美童は小さく舌を出した。
 苦虫を噛み潰している約一名は無視することにしよう。
「ま、女の子が綺麗になる理由といったら一つだけよね。」
 可憐がにこやかに語り始める。
「まあ、まさか・・・!」
 野梨子が信じられないといった面持ちで口元を押さえる。
「そうだよね。まさかと思うけど、そのまさかだよ。」
 美童が二人の女性のほうへと身を乗り出す。
「おい、色恋沙汰とか言い出す気か?悠理だぞ?」
 魅録がやや青ざめて言う。
 しかし他の三人の目線が一点に向かうのに気づいて彼もそちらを見る。
 皆の注視を浴びているのに珍しくも気づいていないのか、彼は雑誌から目を離さない。どうにも不機嫌な様子がにじみ出ている。
 四人は無言で目を合わせると、肩を竦めあった。

「でーもその相手が問題よね。」
 急に可憐が大声で言い出したので魅録と野梨子はびくりと震え上がった。可憐の目が少しばかり据わっている、がその光は楽しそうだ。
「そうだよね。いったい誰なんだろうね?」
「あら、美童にもわかりませんの?」
と、意図どおりに乗ってきた野梨子に美童は片目を瞑ってみせた。
 わかってて言ってやがるな、こいつら。と魅録は苦笑いを浮かべた。
 野梨子もわかってて乗っているのだからタチが悪い。
「悠理が泣くようなことにならなきゃいいんだけどね。お姉さんは心配よ。」
と可憐はハンカチを取り出す。そこまで演技しなくても。
「そうですわね。もしそうなったら私たちでしっかり慰めてあげませんと。」
 そう言う野梨子は芝居がかりすぎる可憐を咎めるように見つめていて、セリフと表情がまるで一致していなかった。
 ま、どうせ清四郎の奴はこっちを見ちゃいないし、どうでもいいんだがよ。と魅録は骨董雑誌のページを刳る手が止まった男をのんびりと観察する。
 瞬間、清四郎が顔を上げる。ばっちり魅録と視線が合った。
 ぞっとするほどの冷たい視線に魅録は思わず青ざめる。俺じゃねえ!
 魅録の心の叫びに気づいたのか、清四郎ははっとしたように顔を背けた。
 他の三人も清四郎に気づかれないように逐一それを観察している。

 しん、と沈黙が生徒会室に流れた。

「ちょっと用事を思い出しました。お先に失礼します。」
 不意に清四郎が言う。
「おう。」
という魅録の声が心なしか裏返っている。
「私は可憐とお買い物の約束がありますのでお先にどうぞ。」
「遅くなったらタクシーでも呼ぶから心配しなくていいわよ。」
 野梨子と可憐も清四郎に手を振る。
「気をつけてね。」
 美童はにんまり笑んでいる。
 だが清四郎はちょっと手で挨拶だけ返すと、彼らの表情にも気づかなかったように生徒会室を後にした。

「ね。そろそろいいんじゃない?魅録。」
「・・・だな。もう正門を出るころだろ。」

───しばし爆笑。

「あ、あいつ、絶対勘違いしてる!」
「一瞬相手が魅録かと思ってたよね。」
「笑い事じゃねえぞ!てめえもあの目で睨まれてみろ!」

 とどのつまりがお見通しだったのである。
 清四郎は悠理に惚れている。
 だが言い出せずにいるのだ。
 最近、実際に綺麗になりつつある悠理に焦燥感を抱いている彼である。
 仲間たちはその様子を多少の微笑ましさとともに見ていたのだった。

「それで?悠理が恋をしてるのは本当ですの?」
 野梨子が目をらんらんと輝かせて美童と可憐に問う。
「本当も本当だって。」
「なあにい?魅録も野梨子も気づいてなかったの?」
 その二人の笑い涙を流しながらのセリフに魅録と野梨子は顔を見合わせた。
「気づかずに芝居に乗るなんてなかなかやるじゃない、野梨子も。」
 可憐が目じりを拭う。野梨子は軽く頬を染めた。わからないなりに清四郎をからかう楽しさに乗ってしまったのだった。
「で?誰なんだ?」
 魅録が疑問符まじりに訊ねる。本気で見当がつかない。
 あんな風な話の流れに持っていくということはまさか自分ということはあるまい。
 美童と可憐は一旦笑い転げていたのをやめ、「んふふー。」と微笑みあった。
 そして口を開いたのは美童だった。

「清四郎だよ。」

 そのセリフで、魅録と野梨子はまたも顔をまじまじと見合わせてしまった。
 そういえば「清四郎」「せーしろー」とまるで犬の如く清四郎に懐く悠理の顔がとても可愛く見えたことはないか?
 いつだって悠理が最初に頼るのも最後に頼るのも清四郎ではなかったか?
 無邪気に清四郎の首に抱きつく悠理の瞳に、艶が見えたことがなかったか?

「なるほど・・・」
「納得ですわ・・・」

 そして明日の清四郎と悠理の様子を想像してやいのやいの楽しそうに話し始める美童と可憐を見て、
「お前ら・・・悪魔・・・」
と呟いた魅録。
「あら失礼ね。」
「僕らは愛のキューピッドだよお。」
と、それを聞きとがめて即座に反論する二人の背後に、清四郎ばりの悪魔の尻尾の幻影が見えた野梨子なのだった。

(2004.11.22)
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