2015/02/07 (Sat) 21:37
・パラレルの吸血鬼ストーリーです。しかしオカルト度は低めです。
・耽美にグロいエロス目標でしたが、それを期待される方にはかなり淡白に見えるかもしれません。私の筆力不足です。
・一番のご注意点は、当初カプが清→悠×野であることです。悠×野の同衾シーンもあります(いきなりいちゃついてます)。
・最近は二次創作でしかお目にかからないようなアホっぽいエロ設定も出てきます。
・耽美にグロいエロス目標でしたが、それを期待される方にはかなり淡白に見えるかもしれません。私の筆力不足です。
・一番のご注意点は、当初カプが清→悠×野であることです。悠×野の同衾シーンもあります(いきなりいちゃついてます)。
・最近は二次創作でしかお目にかからないようなアホっぽいエロ設定も出てきます。
森には魔物が住んでいる。
木々が鬱蒼と生い茂り、太陽の光は昼でも地面までは届かない。
じっとりとした空気がその闇を支配している。
昼間はそれでも生き生きとした獣たちが往来し、小動物が小さな木の実などを運ぶさまが見受けられる。
木々には季節になれば花が咲き、虫たちが舞う。下草もその時々に可憐な花を咲かせている。
野草に苔に羊歯(シダ)に茸。人や様々な動物たちを養うだけの生命が森には溢れていた。
だがこの国の人々が森の奥まで足を踏み入れることはほとんどない。
ただ一筋だけ森を縫うように走る街道が、森の向こうにある隣国との接点だった。
ほんの時折、その街道から森の奥深くへ入って行く小道はあったのだけれど、その先がどこへ続いているかなんてその街道を行き来するほとんどの者たちは知らなかった。
もちろん、森の中で獣を狩りその肉や皮革を街に売りに行く猟師たちの小屋やらがその小道の先にあることがほとんどだった。
月がほのかに部屋の中を照らしていた。
瀟洒な作りの家具が品よく並べられている。
最初にこの部屋のドアを開けたときには溜まりに溜まった埃が層を成していた。壁と天井の出会うあたりには蜘蛛の巣が幾重にも張り巡らされ、椅子の足も絨毯の毛もほとんど朽ちていたと言っていい。
今はそれらも取り繕われ、炉には暖かな火がともっている。
部屋の真ん中には、恐らくこの館の女主人のためにであろう拵えられた、大きな天蓋つきのベッドが鎮座している。
赤い緞子の天蓋からは薄いレースのカーテンが下がっており、外界と寝床とをもう一重、区切っているのだった。
一人で寝るには広すぎるその寝床に、今は二人の少女が眠っている。
ふと、一人の少女が体を起こし、暖炉の炎の揺らめきに合わせてその影が大きくカーテンに映し出された。
「・・・悠理?もう夜ですの?」
と、か細く、だが透き通って部屋の隅まで響き渡るような、涼やかな声がする。
呼びかけられた少女はその金色の瞳を細めると、まだ寝ている少女の黒髪をなぜた。ゆっくりと、やさしく、愛しげに。
黒髪の少女は気持ち良さそうに再び目を閉じる。
「まだ寝てろ。野梨子。餌とってくるから。」
悠理と己が呼びかけた少女の薄い茶色の髪がふわふわと揺れているのを、野梨子はぼんやりと見つめる。いつも悠理は野梨子の艶やかでまっすぐな黒髪を羨ましがるけれど、野梨子にとっては悠理のふわふわとした軽やかな髪こそが憧れだった。だからこそ髪を肩で切りそろえて、少しでも軽やかな髪を演出しようとしていた。
「気をつけてくださいましね。この国の警備隊は優秀だと言いますから。」
「あっは。あたいが捕まるとでも?大丈夫だって。ったく、心配性だなあ。」
悠理が苦笑いする。そこには絶対の自信が溢れている。
眩しい。それは本当に眩しい。
野梨子は自然に己の眉が寄せられるのを感じる。
「私がいつまでも自分で食事がとれないから・・・」
言いかけるのを悠理は顔を寄せ、己の唇で塞いだ。
「それは言うなっていつも言ってるだろ?」
「でも・・・」
「お前が“狩り”を覚えたいならいつでも教えてやる。な?」
至近距離で悠理に微笑まれて、野梨子の口元も思わず綻ぶ。
「ええ。お願いしますわね。」
それは果たされることのない約束。わかっていて何度も交わされる約束。
野梨子は己の勇気のなさに、唇を噛み締めるばかりなのだった。
「じゃ、また夜明けに、な。」
悠理は寝台の上に散らばっていた服を身に纏い、椅子に無造作にかけてあった濃い色のマントを引っ掛けると、空気の淀んだ部屋を抜け出した。
満月が煌々と世界を照らしている。
悠理は館から出ると、一旦空を見上げる。
森の奥の開けた一角にある石造りの館。月に照らされた外観は、蔦に覆われてはいてもかなり寒々しい。
中は古びたカーペットやタペストリーで温かなのにな、と悠理は思う。
同居の男はとうに街に出た後らしい。野梨子を一人にすることになるがいつものことだ。
さくっとここだけは乾いた土を踏みしめると、少女は一歩を踏み出す。
目の前には暗い森。そこへと伸びる一本の道。
道をほんのひと時ばかり歩けば街道に出る。そこからこの国の王都まではすぐ。
街道が王都へと入っていくところには門があり、夜は硬く閉ざされている。だからその手前で少女は道を逸れる。
どんな城壁や壕に囲まれた都市だって、どこかしら抜け道はある。
小川の近くにそれはあった。
少女はまんまと枯れた水路に身を滑らせると、王都へと向かって暗闇の中を進み始めた。
月の光が届かずとも、少女にはそれは関係ない。
真の闇の中でも彼女の金色の瞳はすべてを見ることができるのだから。
そうして、彼女はこの王都で新たな運命と出会う。
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