忍者ブログ
こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
Admin / Write
2024/05/17 (Fri) 15:02
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2015/02/18 (Wed) 00:21
某掲示板投稿作。これが、恋?

拍手



「悠理?」
 男が気遣わしげに彼女を呼ぶから、彼女ははっと我に返った。
 そっと彼が指の背で彼女の頬を撫でる。
 その指を雫が濡らすのを見て、初めて彼女は自分が涙を流していたことを知った。
 悠理はきゅっと唇を噛み締めると、笑もうとした。張り付いたような笑みになっていないか、それだけが心配だった。

 こんな、こんなはずじゃなかったのに、な。

「なんだか最近、悠理が情緒不安定じゃありません?」
 放課後の部室。野梨子が悠理の様子を眉をひそめながら見ている。
「そうねえ。なんとなく見当はつくけどね。」
 可憐は訳知り顔で頬杖をついている。
 二人は瞬間、目を見合わせると、同時に席を立った。
「悠理、うちの近くに美味しいカフェが出来たから連れてってあげるわよ。」

 ずずっとバナナセーキを飲む。なんとなく懐かしいような甘い香。
 悠理は向かいに座る親友たちに促されて口を開いた。

 なんか、さ。別に辛いわけじゃないんだ。
 怖いとか寂しいとかとも違って、でも胸が痛くて。
 急に走り出したくなるような、なんかに焦るみたいな。
 でもあいつの顔を見たら、痛いところが温かくなるんだ。
 ほっこり温かくて、甘くて、なのに痛くて。
 ・・・泣くつもりなんか、ないのにさ。
 変だよな。あたいらしくないよな。

 それを聞いて可憐と野梨子は目を見合わせる。
 なんとまあ、食欲と睡眠欲しか持ちえてないようなこの友人が、こんな感情を持つ日が来るなんて、ね。
「その気持ちの名前、教えてあげましょうか?悠理。」
 可憐がにこやかに言う。
 相手があいつだって言うならとことん応援してやるわよ。
 可憐が見るところ、相手の男はまだ悠理の気持ちに気づいてない。
「恋、ですわね。」
 野梨子も口元を綻ばせながら、答えを与えた。
 こんな可愛らしい悠理の背中を押さずにいられようか。

「恋?あたいが?」
 悠理が頬を真っ赤にしてぽかん、と口を開けた。
 やっぱり自覚してなかったらしい。
「その、訳もなく涙が出たりするのも恋のせい?」
「悠理。“愛”という字に“しい”と送り仮名を振ったらどのように読むかご存知?」
 唐突に野梨子が訊ねる。
「えと・・・“あいしい”?」
 首をかしげながら言う悠理に、可憐ががくっとテーブルに突っ伏する。
「“いとしい”でしょ!」
とツッコミを入れる。
「そうですわね。“いとしい”。でもね、昔は“かなしい”とも読みましたのよ。」

 恋をすると涙が出るのは、悲しいからじゃない。愛しいから。
 いとしい、かなしい、コイゴコロ。
 きっと、ね。

 恋はやさしくて、たのしくて、かなしくて・・・あったかい。
 女たちはそれぞれの恋を思い、微笑んだ。
(2005.1.6)
(2006.2.6サイト公開)
PR
Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
  HOME   71  70  69  68  67  66  65  64  63  62  61 
プロフィール
HN:
秋美もっぷ
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
サイトは開店休業中
メールフォーム
忍者ブログ [PR]