2015/02/20 (Fri) 00:26
「・・・あんたたち、いつの間にそんなことになってんのよ?」
呆れたような女の声が聞こえて、清四郎は覚醒した。
「可憐?なんでここに?」
と目をこすりながら起き上がろうとして、自分の右腕に乗っているものに気づいた。
茶色のくせっ毛が揺れている。
途端に、自分が今どういう状況にいるか思い出して真っ赤になった。
よく見ると、可憐の後ろには黒髪の幼馴染の少女が自分以上に顔を赤くして火照る頬を押えている。
部屋の入り口にはにやりと笑う姉の姿。
「あ、姉貴!なんで先に起こしてくれなかったんですか!」
と叫ぶと、その声がうるさかったのだろう、腕の中の少女が目を覚ました。
「んー・・・せいしろー、うるさい。」
むにゃむにゃとした感じで彼の顔を見上げる。
が、その顔がまるで見たことないくらい染まっているので目を見開いた。
「どうしたんだ?」
と問うまでもなく、彼女はその赤面の原因を知ることになる。
「悠理。どういうことか説明してくれない?」
「げ!可憐!野梨子に和子さんも?!」
慌てて起き上がる彼女はいつもどおりにボーダーのカットソーに綿パンツを穿いていた。
着衣の乱れがないことに野梨子は胸をなでおろした。
「うっそ~。それで付き合ってないなんて信じないわよ。私たちは!」
頓狂な声を挙げる可憐。
「だってそれが事実なんだからしょうがないでしょう。」
うんざりと言った様子で清四郎は繰り返す。
「だから~、勉強の途中で眠くなったから一緒に昼寝してただけなんだって。」
悠理もさっきから何度も言っているセリフを繰り返す。時々声がひっくり返りそうになっているのは動揺しまくっているせいだろう。
「あら、私たちのときはそもそも一緒にお昼寝すらしませんわよ。ねえ、清四郎。」
野梨子は冷ややかに言うがその目が楽しげな光を帯びている。
清四郎は正直、勘弁してくれと言いたかった。
やっとのことで悠理がここまで自分に気を許してくれるようになったのだ。
またここで変に意識されてはもとの関係に戻ってしまう。
無邪気に体を摺り寄せる彼女に手を出せない状況は酷ではあったが、甘い苦しみだった。
失いたくないぬくもりだった。
真っ赤になって自分たちの関係を否定する彼女にまだ想いを告げてはいない。
「はいはい。腕枕をするのは悠理にだけですよ。」
観念したように清四郎は言う。
悠理が目をむいた。
「ナニ言い出すんだよ!」
と彼に掴みかからんばかりの勢いで言う悠理を可憐が抑える。
「なに?なに?認めるの?清四郎。」
可憐と野梨子の眼がきらきらと輝いている。
「悠理だってタマやフクと寝るでしょ。それと一緒ですよ。」
「それって・・・」
「悠理は清四郎のペットと言うことですの?」
可憐と野梨子は顔を見合わせ、次の瞬間、部屋に鳴り響いた乾いた音でまた清四郎のほうを見た。
「ば、ばかやろーーー!あたいは犬猫じゃない!」
紅葉型に真っ赤に腫れる清四郎の頬を見て二人は、
「本当に馬鹿ね。」
と思ったがあえて口には出さなかった。
その後、数日の間、清四郎は頬の手形についてあることないこと噂されることになる。
(2004.8.12)
(2004.9.18公開)
(2004.9.18公開)
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