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こめすた保管庫
二次創作サイト「こめすた?」の作品保管ブログです。 ジャンル「有閑倶楽部(清×悠)」「CITY HUNTER(撩×香)」など。
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2024/05/17 (Fri) 15:49
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2015/02/19 (Thu) 23:54
19歳。純愛の快楽。

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 生徒会室のドアを開ける。
 あいつは・・・いない。
 悠理はほっと一息ついた。

「よお、お疲れさん。」
と魅録が声をかけてくれる。
「ちょうどお茶が入ったわよ。」
と可憐が今日も艶やかに微笑む。
「宿題を忘れて怒られてたんですって?相変わらずですのね。」
 野梨子が苦笑しながらお菓子を勧めてくれた。
 美童は彼女の方に片目を瞑って手だけ振って見せた。部屋の隅で電話している。

「清四郎は?」
 鞄を置きながら何気なく訊ねる。
「ミセス・エールのところですわ。今度の行事のことで呼ばれたそうで。」
 野梨子が応えた。
「ふうん。」
とだけ応えて悠理は椅子に座って菓子に手を伸ばした。

 かちゃり、とドアノブが回る。
 途端に悠理はぞくりとした感覚が体を這うのを感じた。

「あら、清四郎。ちょうど噂してたところですわ。」
 入ってきた黒髪の男に野梨子が言った。
「んで?俺たちの仕事は?」
 一応副会長らしく魅録が言う。
「大した仕事はありませんよ。そうですね、僕と魅録だけで済みそうです。」
「げ。やぶへび。」
と眉をしかめた魅録に女三人は吹きだした。

「あー、参った参った。本気にならない約束で付き合ってた子が本気になっちゃってさ。本当に僕って罪作りだ。」
と、そこに美童が電話を終えて加わってきた。
「今に痛い目にあうわよ。」
 耳タコと言った風情で可憐が呆れたように言う。
「美童にその忠告は無駄というものですよ。これまでだってかなり痛い目にあったはずなのに懲りてないんですから。」
 清四郎が書類の束をとんとん、とまとめながらしれっと言った。

 そして───清四郎の目がちらりと動く。



 じっとりと首筋を舐められるように熱が這う。
 ぞくり、とした感覚がまた体を駆け上ってくる。

 まるで男の唇が、体を這い回るように。

 首。鎖骨。胸の頂は外周を回る。
 そのまま脇を舌が撫でる。
 二の腕の柔らかな肌を尖らせた舌先が伝う。
 指先までじん、と痺れたように熱を帯びる。

 思わず一つ、溜息が零れそうになり、それを飲み込む。



「悠理?」
と訝しげな声が聞こえた。
 見ると金髪の友人がすべてを見透かすような目でこちらを見ていた。
 この男の青い瞳は、自分たちの関係を見抜いているのかもしれない。
「どうしたの?顔が赤いわよ?」
と可憐が気遣わしげに悠理の額に手を伸ばした。
 悠理は首を振ってそれを払うと、小さく口の端を上げようとした。
「なんでもない。今日は帰るよ。」
と、逃げるように生徒会室を後にした。



 清四郎の目が、熱い。

 皆は高校3年生になっていた。2年生を不本意ながら2回やったので、生徒会室が彼らのものになってから3年になる。
 あの、秋の日から、3年。

 いきなり始まった二人の歪んだ関係は、またある日を境に他のものへと変化していた。



「清四郎もやるね・・・」
と美童は頬杖をついた姿勢のまま呟いた。
「何か言いましたか?美童。」
 清四郎が書類から目線を上げて問う。
「別に。」
 悠理が去った後の生徒会室に残っているのは仕事が残っている生徒会の正副会長と、美童だけだった。
 可憐はデートに、野梨子は本屋に、と続けて去っていったのだった。
「どうせ残ってるんなら手伝えよ、美童。」
と魅録が鋭い目でじろりと美童を睨んだ。とはいえ、もともと彼の目つきがきついだけの話で、本気で殺気やらを籠めた目ではなかった。
「もう終わるとこじゃん。」
 美童は完成済みの書類を持ち上げるとひらひらと振って見せた。
「そうですね。僕のほうは終わりましたよ。」
と清四郎は書類の束をとんとん、と整えながら言う。
 そしてそれを茶封筒に入れると再び視線を美童の方へと固定した。
「それで?美童。僕に何か言いたいことがあるんじゃないんですか?」
 美童はちらりと視線を魅録に向ける。
 魅録もちょうど書類に目を通し終えたところだったようで、書類を封筒に入れるべく持ち上げたところだった。
「俺はいないほうがいいか?」
「いや、魅録にも聞いて欲しいかな?たぶん、気づいてないだろうけど。」
「はあ?」
 さすがに魅録はわけがわからず問い返す。そして存外美童の表情が緊張しているのを見て取ると、清四郎のほうへも視線を向けた。
 ちょっと見た目では二人ともいつもの静かな顔なのだが・・・
「清四郎。人前で悠理を視姦するのやめなよ。可哀想じゃん。」
 苦笑ともつかない笑みとともに美童が言った。
 魅録は一瞬漢字変換に迷ったが、やはりその意味はそうなのだろうかと行き当たると凍りついた。
「僕はそんなつもりはありませんけど?」
 清四郎はしれっと返す。
「嘘付け。あの匂いに僕が気づかないわけないだろ?」
 美童は追及の手を緩めない。
 一瞬、二人の色の違う瞳が交錯する。
「あの匂いは、濡れてる匂いだ。」
 ゆっくりと美童の口が動く。
 清四郎は表情を変えない。何を考えているかわからない無表情のままだ。
「あんまり卑猥なことを言ってるのがばれたら悠理に殴られますよ。」
 少しく呆れたような口調でつむぎだされる。
「あの婚約騒動のときに、悠理に手でも出した?」
と、美童は静かに続ける。
 魅録は美童からいつもと違う気配が立っていることに気づいた。
 表情はいつものように柔らかい笑みを浮かべているようなのだが、研ぎ澄まされた気が清四郎へと追及の触手を伸ばしている。
 ああ、一応こいつもフェンシングやらスポーツで格闘家に近い目を養ってるのだった、と魅録は思い当たった。
「あの婚約騒動のときもその後も、あなたが言うような意味で悠理に触れたことはありませんよ。」
 清四郎は淡々と返した。

 もちろん全く接触がなかったわけじゃないことは皆、知っている。
 試験勉強で悠理をしごくときに何度も頭をはたいただろう。
 幽霊騒動で怯える悠理が清四郎にしがみつくのなんか見慣れたものだ。
 正夢騒動で泣く悠理を落ち着かせたのは清四郎だ。

「でもあの婚約を機にお前らの関係が変わったように見える。」
 ただ、二人の視線の温度が変わったように見える、曖昧な確信でしかないけれど。と美童は悔しげに顔を歪めた。
 この理路整然とポーカーフェイスを決める男を突き崩せるだけの物証に乏しいのだ。
 すると、これまで会話の内容に思考回路がショートしたかのように黙り込んでいた魅録が口を開いた。
「じゃあ、婚約騒動の前は?」
 まさか、な。と思わないではない。
 美童の言葉を聞いてすら、悠理がオンナになっているなどととても信じられたものではない。
「“あの”悠理に?何かあったように見えましたか?」
 清四郎は魅録の“まさか”という思いに気づいている。
 だからなのか、勝ち誇るように口の端がぐいっと上がった。
 その顔に美童の形相が変わり、唇が引き結ばれるのがわかった。
 清四郎はその顔を見て一瞬「しまった」という表情を見せたが、そのまま鞄を持つと立ち上がった。
「用事がそれだけなら帰りますよ。」
「待てよ。」
と呼び止める美童の声は、喧嘩慣れした魅録でさえぞっとするような温度の低さだった。
 清四郎の顔も元の無表情に戻っている。
「お前、否定してないだろ?」
 ゆっくりと浮かんだ美童の笑みは、凄惨という言葉以外に形容できぬものだった。

「婚約騒動の前に、お前は悠理に何かしてた。そして騒動を機会にそれをやめた。そのくせ今も熱い目で悠理を追い詰めてる。」

 そうだろ?と美童は清四郎の目をじっと見据えたまま言った。
 そのまま二人は睨みあう。

 沈黙が流れる。

 だが、最初に口を開いたのは意外にも魅録だった。
「ま、俺としては悠理が泣くことにならなけりゃどうでもいいんだがよ。」
 がしがしと短く刈り込んだピンクの髪を掻き毟っている。
 そしてぴたりと手を止めると清四郎へと目を向けた。
「お前は無関係だと思ってていいのか?」

 確かに魅録は美童のようにそのことに気づいていたわけではないからはっきり話が見えているわけではない。

 清四郎はここで初めてぐっと奥歯を噛み締める様子を見せた。
 いつもポーカーフェイスで仲間の追及になど微塵も揺るがない彼にしては珍しいことだ。

「あなたたちにいつまでもごまかしてはいられない・・・か。」
と、清四郎はふっと溜息を一つついて頭に手をやる仕草をした。
 彼自身、どうしていいかわからないといった悩ましい風情だった。
「悠理を困らせているのはわかってるんです。でも、想う気持ちは止められない・・・」

 うっすらを目元を朱に染めて遠くを見る黒髪の男の様子に、残る二人は驚き、そして顔を見合わせた。

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