2015/03/18 (Wed) 22:26
小林健吾が中庭に行くと、木陰に座った小林吹雪がにんまりと微笑んでいた。
彼らは苗字が同じであるが、赤の他人である。
向日葵高校でたまたまクラスメイトになり、今ではこっそりと付き合う恋人同士だった。
「なににまにましてんだ。」
と怪訝そうに声をかける健吾に、吹雪はそのにんまりを解かずに顔を向けた。
「だって~、小林クンが幸せそうに笑ってるんだもん。」
彼女が指し示す先では、背も低く小学生にしか見えないが彼らと同級生である小林大和がいつものように笑顔を振りまいていた。
ショタコン吹雪は、大和が大好きなのである。
「でも千尋と一緒であの笑顔ってのがちいいっと悔しいけどね。」
と口では言いながらも、そんなに悔しそうには見えない。
大和は校長先生と、やっぱり彼らのクラスメイトである美少年、小林千尋と一緒に何やら楽しそうにしゃべっていた。
結局のところ、大和だけでなく千尋も吹雪にとっては大事な存在なのである。
もちろん健吾は別格なのだとわかってはいるのだが、どうも彼らに嫉妬してしまう自分が止められない彼だった。
「あ、吹雪ちゃんと健吾君だ~。」
と大和が二人を見つけて手を振っている。
「あのね~、今年もミスひまわりとミスターひまわりコンテストやるんだって~。」
と叫んでいる。
千尋がにやり、と笑った。
「今年も大和子ちゃんと吹雪クンのベストカップルで優勝だよね、もちろん。」
昨年の悪夢が吹雪の脳裏をよぎった。
「ばかたれ~~~。小林クンがミスターひまわりに決まってるだろうが!!」
「またクラス投票だろ、どうせ。」
ぼそっと健吾が呟いた。
「しかし平和な学校だよね。お気楽な行事が多いったら。」
「そうだな。」
教室に帰りながら二人は会話していた。
大和と千尋は校長室に忘れ物をしたといってそちらに行ってしまった。
「うふふ。でも今年こそ大和クン、ひまわり息子に決定よね。」
「いや、だからクラスでの投票・・・」
「何よ!彼以上にひまわりのような笑顔を浮かべる男がどこにいる!」
健吾は黙る。
こういう風に熱の篭った吹雪を止めるのは容易ではない。
それに“ひまわり息子”などと言われると確かに大和以上にその称号が似合う男など、高校生男子にいるはずがなかった。
何より、大和はあの外見に反してかなり大人だ。中身はクラスの皆が認めるほどのいい男なのだった。
「ミスは・・・やっぱりゆりちゃんかなあ。」
と吹雪が急に小さな声で言った。
やっぱり大和と吹雪ではどうしても男女逆転カップルになるし、今年は吹雪も自分の気持ちに気づいている。
女の子として並ぶなら、健吾の傍がいい。
うん。大和クンとゆりちゃんのカップルなら文句なく可愛い。ロリ・ショタ趣味の審査員がいれば一発よ。
吹雪はそんな風に思っていた。
ゆりちゃんの隣に立つ男に嫉妬するその他の男子どもだって大和クンになら許すだろうし。
それに・・・
「最近さ、クラスの皆の笑顔がみいんな“ひまわりの笑顔”って感じだよね。今年はホント誰が出てもいい気がする。」
と健吾の顔を見上げて言う吹雪の顔がとても嬉しそうだった。
だから、健吾の口からその言葉がするりと出てきた。
「俺はお前も充分“ひまわりの笑顔”って奴だと思うぞ。」
二人ともしばし沈黙した。
こーいーつーはー!またさらりと嬉しいことを・・・
普段口下手の反動か!?
「・・・そ。ありがと。」
「・・・いや・・・」
なんとなくそのまま一言もしゃべらずに教室までたどり着いた二人なのだった。
(2004.7.25)
(2004.10.1公開)
(2004.10.1公開)
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