2015/03/09 (Mon) 23:15
男はあんぐりと口を開けた。
とても見覚えがあるようで、やっぱり初めて見る光景で。
見慣れた姿のようで、想像すらしたことない姿で。
いや、想像はしていた。
真っ白なドレスを着て幸福そうに微笑む女を。
自分ではない他の男の腕に手を伸ばす、この女を。
1年間離れていた。
その間にふんぎりはついたはずで。
それがなぜか、今は硝煙漂う汚らしい倉庫の中で、男の腕の中にいる。
男は、己の胸に顔をうずめる女に肩にそっと手を当てた。
べりっと引き剥がす。
「なんでお前、こんなとこにいるわけ?」
「いいじゃない、あっという間に片付いたんだから。」
そりゃあ、簡単に片付いたさ。この女が両肩に乗せたバズーカをぶっぱなしまくったんだから。
1年ぶりのはずなのに迷手ぶりは健在で、床に倒れている雑魚どもは致命傷となりうる傷すら負っていない。
1年前、いつものような些細な喧嘩から、女は部屋を飛び出した。
だけれどそれまでと違ったのは、二人がすでに一線を越えた関係だったこと。
それまでと違ったのは、そのまま1年間、顔も合わせず過ごしたこと。
モデルとして女は成功していた。
だが、やはり二人はまた出会ってしまった。
「そのバズーカは?」
「海坊主さんの車借りたら付録でついてた。」
そりゃあ、そうだろう。あの男は自分の結婚式にも重火器一式持ってきていた。
他人の結婚式にだって遠慮なく持っていくだろう。
そうだ。今日は・・・
「おめーの結婚式だろうが!今日は!」
こんなにドレスをボロボロにしちまってどうするんだ!?とぶつぶつ言う男の頬に、女は自分の手を当てて無理やり視線を合わせる。
「がたがた言ってるんじゃないわよ。」
言葉どおり、男は黙る。
他の男と結婚することを選んだのは彼女自身。
だけど、やっぱり男が戦いに行ったと聞いて走り出したのも、彼女自身。
男は何もしなかった。
女の婚約者のガードを引き受けただけ。
動いたのは、彼女。
「やっぱりあんたが好きよ、撩。」
「とんでもねえ女だねー。香チャンたら。」
(2006.8.15)
(2007.9.20再録)
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